嘉穂劇場

嘉穂劇場の概要

嘉穂劇場は福岡県飯塚市飯塚に位置し、伝統的な文化の象徴ともいえる劇場です。この劇場は、地域の貴重な歴史的資産であり、登録有形文化財にも指定されています。また、近代化産業遺産としても認定され、地域文化の振興に寄与しています。

歴史の足跡

嘉穂劇場の起源は、1921年（大正10年）に設立された株式会社中座に遡ります。この劇場の初代社長、麻生太七は著名な炭鉱経営者の家系に属し、劇場の設立場所も自身の会社の本社内にありました。1922年に開場した中座は、大阪市の道頓堀に存在した中座を模して建設され、その規模は地域の芝居小屋の中でも特に大きなものでした。

しかし、やがて運命の波に翻弄され、中座は1928年に火災で全焼し、1929年には再建されたものの、その後の台風による倒壊で再度解散を余儀なくされました。

嘉穂劇場の開場

1931年に伊藤隆の手により再建された劇場は、嘉穂劇場と命名されました。この新しい劇場は、木造2階建てに設計され、筑豊地域の中心産業である炭鉱の労働者やその家族に愛されました。1936年には地域の33劇場が加盟する筑豊2市4郡劇場組合が結成され、嘉穂劇場はその重要な一翼を担うこととなります。

戦後にはプロレス興行など新たな試みも行われましたが、経営は波乱の連続で、徐々に営業日数が減少する悲しい時期もありました。伊藤隆の死後、娘の伊藤英子が経営を引き継ぎ、地域の文化活動を続けました。

水害とその後の復興

2003年には梅雨前線豪雨により、劇場は浸水し大きな被害を受けましたが、全国から芸能人が駆けつけて復興支援チャリティイベントが開催されました。こうした支援を受けて、劇場は復旧工事を経て2004年に再開し、文化の発信地としての役割を果たしてきました。

その後、劇場は特定非営利活動法人の運営下で営業を続けましたが、2020年以降の新型コロナウイルス感染症の影響で入場者数が大幅に減少し、最終的に2021年に休館となりました。

現在の取り組み

2021年には劇場の所有権が飯塚市に移譲され、2022年からは耐震診断や補強工事が行われることが決まりました。さらには、クラウドファンディングも活用して改修資金を集めるなど、新たな運営方針が模索されています。

建物の特徴

嘉穂劇場は、江戸歌舞伎小屋の様式を取り入れた美しい木造2階建ての建物です。舞台は間口10間、奥行き9間という広さを持ち、観客席は1階450-800人、2階300-400人を収容できる設計です。

このように嘉穂劇場は、地域の歴史や文化を象徴する存在として、変遷を経ながらも地域の人々に愛され続けてきた劇場です。今後の再生に向けた取り組みが期待されています。

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