嘉門安雄

嘉門安雄：日本の西洋美術を牽引した巨匠

嘉門安雄(1913年-2007年)は、20世紀後半の日本の西洋美術界を代表する研究者にして評論家です。東京帝国大学文学部美術史学科卒業後、西洋美術史研究に没頭し、数々の美術館の要職を歴任。その活動は、日本の美術界に多大な影響を与えました。

学術研究と美術館勤務

嘉門氏は1937年、東京帝国大学文学部美術史学科を卒業。その後、西洋美術史を専門とし、児島喜久雄氏に師事しました。1947年からは東京国立博物館に勤務。マチス、ブラック、ルオーといった巨匠たちの展覧会を企画・担当し、日本の美術ファンの心に深く刻まれる展覧会を数多く実現しました。

1959年、国立西洋美術館開館に伴い異動。事業課長として、西洋美術コレクションの充実や展覧会の開催に尽力しました。1964年には、第32回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展のコミッショナーも務め、国際的な舞台で日本の美術界を代表する存在として活躍しました。

美術館長としての功績

一方、1956年からはブリヂストン美術館の運営委員も務め、1966年には同館に勤務。1976年から1995年まで館長として、ブリヂストン美術館の運営に大きく貢献しました。その手腕は高く評価され、1994年には東京都現代美術館の館長に就任。同館の設立準備から関わり、2000年まで館長として、現代美術の振興に尽力しました。その後も名誉館長として、東京都現代美術館の活動を支え続けました。

さらに、全国美術館会議議長も務め、日本の美術館全体の活性化に貢献しました。これら数々の要職を歴任したことは、氏の高い専門性と組織運営能力を物語っています。

多彩な著作活動

嘉門氏の活動は、美術館運営や展覧会企画にとどまりません。多くの著作を通して、西洋美術史研究の普及にも大きく貢献しました。共編著や単著、翻訳など、その著作数は膨大です。

代表的な著作として、『マネ』（石井柏亭氏との共著）、『絵の歴史 西洋 1 太古 - ルネサンス』、『西洋美術史要説』、『西洋美術史』などがあります。これらの著作は、今日でも美術史研究の重要な参考文献として高く評価されています。また、レンブラント、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ルーベンスなど、多くの巨匠を題材とした著作も多数発表しており、それぞれの画家への深い理解と造詣がうかがえます。

これらの著作は、専門的な研究論文だけでなく、一般向けに書かれた分かりやすい解説書も多く含まれており、西洋美術への関心を高める上で大きな役割を果たしました。

受賞と没後

1989年には東京都文化賞を受賞し、その功績が広く認められました。2007年、肺炎のため逝去。日本の西洋美術界に大きな損失をもたらしました。しかし、その功績は、日本の美術界、そして美術史研究に永く刻み込まれるでしょう。

嘉門安雄氏の生涯は、日本の西洋美術研究と美術館運営に多大な貢献を果たした、まさに「巨匠」と呼ぶにふさわしいものでした。その業績は、後世の美術研究者や美術館関係者に大きな影響を与え続けるでしょう。

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