嘉門雄三 & VICTOR WHEELS LIVE!

嘉門雄三 & VICTOR WHEELS LIVE!：桑田佳祐の知られざる出発点

1982年3月21日、Invitationより発売された『嘉門雄三 & VICTOR WHEELS LIVE!』。このアルバムは、後の国民的スター桑田佳祐にとって、非常に重要な意味を持つ作品です。なぜなら、彼が「嘉門雄三」名義で発表した唯一の作品であり、実質的なソロデビュー作だからです。

偶然から生まれた「嘉門雄三」

このアルバムのレコーディングは、1981年12月11日と12日、東京・Egg-manで行われたライブを収録したものです。当時まだ桑田佳祐は、サザンオールスターズの一員として活動していましたが、このライブは、桑田自身のバンド（後のKUWATA BANDとは別）での活動でした。

「嘉門雄三」という名義は、英語の「COME ON（カモン）」と、桑田佳祐と同郷で敬愛する加山雄三の名前を組み合わせた造語です。このユニークな名義と、ライブハウスという親密な空間での演奏が、このアルバムに独特の雰囲気を与えています。

レンタル禁止!? 衝撃的なジャケットと封入物

アルバムジャケットは、ビクターのロゴマークである犬が蓄音機に耳を近づけているイラストのパロディ。桑田佳祐本人が蓄音機の代わりに顔を突っ込んでいるという、大胆なデザインです。さらに、レンタル禁止を皮肉った、ゴジラのような怪獣が描かれた紙片が封入されているなど、遊び心と反骨精神を感じさせる演出が施されています。

豪華ミュージシャンと、熱狂のライブ

このアルバムには、桑田佳祐自身のボーカルとギターに加え、斎藤誠(ギター)、MUKU(ベース)、国本佳宏(キーボード)、今野多久郎(パーカッション)、宮田茂男(ドラムス)といった実力派ミュージシャンが参加しています。さらに、ゲストボーカルとして小林克也と原由子が参加していることも特筆すべき点です。

収録されている楽曲は、オーティス・レディング、ビリー・ジョエル、ボブ・ディラン、ザ・バンドなど、洋楽のカバーが中心です。しかし、桑田佳祐の個性が光るアレンジと、ライブならではの熱気あふれる演奏は、単なるカバーを超えた、独自の解釈と表現となっています。特に、ブルース・メドレー「Blues Medley ～ Blues Power」は、エリック・クラプトンへの敬愛を込めた、8分を超える大作です。

貴重な初ソロ作品、そして未来への布石

『嘉門雄三 & VICTOR WHEELS LIVE!』は、カセットテープとレコードでそれぞれ初版のみの販売という、希少性も高い作品です。このアルバムは、後に国民的アーティストとなる桑田佳祐の、まだ世に知られていない頃の、貴重な姿を垣間見ることができる、まさに原点と言える作品です。このアルバムを通して、桑田佳祐の音楽家としての才能と、その後の成功の土台を築いた、初期の情熱を肌で感じることができるでしょう。

収録曲

Side-1

Trying To Live My Life Without You (オーティス・レディング)
Reggae Man (嘉門雄三オリジナル)
Stay (モーリス・ウィリアムス&ザ・ゾディアックス)
Say Good-Bye To Hollywood (ビリー・ジョエル)
Hearts - ハート悲しく (マーティ・バリン)
Slow Hand (ポインター・シスターズ)
The Weight (ザ・バンド)

Side-2

Blues Medley ～ Blues Power (Worried Life Blues、Rambling on My Mind、Have You Ever Love A Woman、Blues Power)
Just Like a Woman (ボブ・ディラン)
Just Once (クインシー・ジョーンズ featuring ジェームス・イングラム)
Any Time At All (ビートルズ)
You May Be Right (ビリー・ジョエル)
Imagine (ジョン・レノン)

参加ミュージシャン

嘉門雄三：Vocal, Guitar
斎藤誠：Guitar
MUKU：Bass
国本佳宏：Keyboards
今野多久郎：Percussion
宮田茂男：Drums
小林克也：Guest Vocal
* 原由子：Guest Vocal

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