噴進弾

噴進弾（Rocket-assisted projectile, RAP）とは

噴進弾は、砲弾の底部にロケットモーターを組み込んだ特殊な弾薬です。発射後、ロケットモーターが点火することで追加の推力を発生させ、通常の砲弾よりも遠くまで飛翔させることができます。この技術は、特に野戦砲や迫撃砲などの火砲において、射程延伸の手段として利用されています。

噴進弾の概要

日本語の「噴進弾」という用語は、かつてはロケット弾全般を指す言葉として使われていましたが、現在ではロケット補助推進弾（RAP）のみを指すものとして定義されています。これは、防衛省の規格においても明確に規定されています。RAPは、発射時の高加速度、高圧力、高回転といった過酷な環境に耐える必要があり、その構造や材料は非常に重要です。特に、ロケットモーターに使用される推進薬は、形状や材料特性の最適化が求められます。

また、発射薬の燃焼によって発生する高圧ガスがロケットモーターの燃焼室に流入するのを防ぐための工夫も不可欠です。装填手の安全性を確保するため、ロケットモーターは火砲から十分に離れた位置で点火されるように設計されており、このため、遅延点火機構やノズル閉鎖機構が用いられます。

ベースブリード方式との比較

噴進弾と類似の技術として、ベースブリード方式があります。これは、砲弾の底部から少量の燃焼ガスを噴出することで、空気抵抗を低減し射程を伸ばすものです。ベースブリード方式は大口径で初速が高い弾薬に効果的ですが、噴進弾は中口径や初速の低い迫撃砲弾にも有効であるという特徴があります。

日本では、迫撃砲には73式107mm迫撃砲用噴進弾やフランス製のPRPAが採用され、155mm榴弾砲にはベースブリード方式の93式155mm長射程りゅう弾が採用されるなど、それぞれの特性に応じて使い分けられています。

噴進弾の具体的な例

73式107mm迫撃砲用噴進弾は、3つのノズルに傾斜角をつけることで、弾体を回転させ、飛翔の安定性を高めています。この噴進弾を使用することで、通常の砲弾の射程が4,000メートルであるのに対し、6,000メートルまでの射程延伸を実現しています。

また、120mm迫撃砲用のJM5噴進弾は、通常のJM1榴弾の射程8,100メートルに対し、13,000メートルまで射程を延伸することが可能です。

結論

噴進弾は、ロケットモーターの推進力を利用して砲弾の射程を大幅に伸ばすことができる重要な技術です。その開発と運用には高度な技術が求められますが、現代の火砲システムにおいて、射程の延伸は重要な要素であるため、今後もその技術は発展していくでしょう。

参考資料

防衛省『防衛省規格 弾薬用語』2019年
弾道学研究会 編『火器弾薬技術ハンドブック』防衛技術協会、2012年

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