四ツ谷用水

四ツ谷用水：仙台城下町を潤した歴史的水路

四ツ谷用水は、宮城県仙台市に位置する、江戸時代に建設された用水路です。別名四ツ谷堰とも呼ばれ、広瀬川から取水した水が、仙台城下町を網の目のように流れる複雑な水路網を形成していました。生活用水や灌漑用水として利用されただけでなく、排水路としての役割も担い、城下町の発展に大きく貢献しました。

四ツ谷用水の流路と規模

本流は郷六地区で広瀬川から取水され、潜穴を経て仙台城下町を東流し、かつては宮町で梅田川に合流していました。現在では、本流の一部が工業用水道として利用されています。江戸時代には、本流から多くの支流が分岐し、城下町全体に水を供給していました。古地図からの推定では、本流の総延長は約44キロメートルにも及んだとされています。広瀬川の取水口と梅田川の放流口には約25メートルの高低差があり、この間の勾配は平均約3.5パーミルでした。

四ツ谷用水という名前の由来については諸説あります。地元の地名に由来する説や、水路建設において複数の谷を木樋で越えたことに由来する説などがあります。

また、城下町の南東部を流れる「孫兵衛堀」という水路も、四ツ谷用水の末流が流れ込んでいたことから、関連性が指摘されています。

四ツ谷用水の建設と歴史

四ツ谷用水の建設は、17世紀前半、宇津志惣兵衛を中心とした人々によって行われました。1627年から1629年にかけて完成したとされ、古地図には1664年にはすでにその姿が確認できます。元禄時代には、城下町全域に広がる複雑な水路網がほぼ完成していたと推測されます。川村重吉（孫兵衛）とその養子である川村元吉も、建設に深く関わった人物として知られています。

郷六の取水部は、洪水によって流失したため、上流に移設された経緯があり、その際に潜穴の数が増えました。

四ツ谷用水の役割と社会生活

四ツ谷用水は、城下町の生活用水として重要な役割を果たしました。飲料水としては使用されませんでしたが、洗濯や清掃などに利用され、防火用水としても機能していました。また、地下水の涵養にも貢献し、井戸の水位を維持する役割も担っていたと考えられています。さらに、城下町の排水路としても機能し、周囲の湿地からの湧水の排水も受け入れていました。

下流域では、灌漑用水としても利用され、農作物の生産に貢献しました。水量の豊富さから、一部地域では天然の河川と誤解されるほどでした。下流域では、生活排水の影響で水質が悪化したため「悪水堀」と呼ばれた時期もありましたが、同時に富栄養化した水は農作物の生育に役立つ面もありました。

水路管理は、水路に沿った地域住民、特に「水下十八町」と呼ばれる18の町が藩の役人の指導の下で行っていました。春と秋には大掃除が行われ、水路の清掃が行われていました。

明治時代以降の四ツ谷用水

明治時代に入ると、四ツ谷用水は衛生状態が悪化し、井戸水の水質にも影響を与えるようになりました。そのため、生活用水としての利用は減少していき、側溝化や暗渠化が進みました。一方、灌漑用水としての利用は継続されました。

1901年には、灌漑用水をめぐる紛争も発生するなど、水資源をめぐる課題も顕在化しました。太平洋戦争中には、防火用水としての重要性から改修が行われました。

四ツ谷用水の現在

現在では、本流の一部が工業用水道として利用されています。その歴史的、文化的価値から、2016年には土木学会選奨土木遺産に選ばれ、その歴史的意義が改めて認識されています。

四ツ谷用水は、仙台城下町の発展を支え、人々の生活に深く関わってきた重要な歴史的遺産です。その歴史と役割を理解することで、仙台の歴史と文化をより深く知ることができるでしょう。

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