四十八願

四十八願とは

四十八願（しじゅうはちがん）とは、浄土教の根本経典である『仏説無量寿経』に説かれている、法蔵菩薩が仏となるために立てた48の誓いのことです。この願は、菩薩が衆生を救済するために、どのような仏国土を建設し、どのような力を持つ仏となるかを具体的に示したもので、浄土教の教えの中心的な部分を構成しています。

願の種類と内容

四十八願は、大きく分けて以下の3つのグループに分類できます。

1. 仏身に関する願: 法蔵菩薩自身がどのような仏となるかを誓った願です。たとえば、光明無量（第12願）や寿命無量（第13願）の願などがあります。
2. 浄土に関する願: 法蔵菩薩が建設する浄土が、どのような場所であるかを誓った願です。国土清浄（第31願）や妙香合成（第32願）の願などが該当します。
3. 衆生に関する願: 浄土に往生する人々がどのような利益を得られるかを誓った願です。念仏往生（第18願）や還相廻向（第22願）の願などが含まれます。

以下に、四十八願の主な内容を具体的に紹介します。

主要な願

第一願：無三悪趣の願: 私の国には、地獄、餓鬼、畜生といった苦しみの世界は存在しない。
第二願：不更悪趣の願: 私の国に生まれた者は、再び悪趣に堕ちることはない。
第三願：悉皆金色の願: 私の国にいる者は、皆金色に輝く身体を持つ。
第五願：宿命智通の願: 私の国にいる者は、過去の生涯を知る能力を持つ。
第十八願：念仏往生の願: 私の名を信じ、私の国に往生したいと願う者は、必ず往生できる。
この願は、法然によって「王本願」と称され、浄土教の中心的な教えとされています。
第二十二願：還相廻向の願: 浄土に往生した菩薩は、再びこの世界に戻り、人々を救済する。

その他の願

光明無量の願（第12願）: 仏の光明は、無限に広がり、あらゆる世界を照らす。
寿命無量の願（第13願）: 仏の寿命は、無限に長く、永遠である。
女人成仏の願（第35願）: 女性も、浄土に往生すれば、男性と同じように成仏できる。
聞名得忍の願（第34願）: 私の名を聞く者は、菩薩の悟りを得る。

四十八願の異訳と意義

『仏説無量寿経』には、サンスクリット原典に基づいた異訳が存在し、願の数も異なります。大きく分けて、二十四願系統と四十八願系統があり、前者は初期の浄土教思想、後者は発展した浄土教思想を示すとされます。

四十八願は、法蔵菩薩が衆生を救うという強い意志の表れであり、浄土教の教えの根幹をなすものです。この願を通して、人々は阿弥陀仏の救済を信じ、浄土往生を願うのです。

親鸞における四十八願

親鸞は、四十八願の中でも特に第18願（念仏往生の願）を重視しました。彼は、『教行信証』において、この願がすべての衆生を救済する根本的な誓いであると説いています。また、第18願の「唯除五逆誹謗正法」という文言についても、その真意を深く考察し、全ての人々が救済されるという解釈を示しました。

結論

四十八願は、浄土教の教えを理解する上で欠かせない重要な概念です。この願を通して、私たちは阿弥陀仏の慈悲心に触れ、浄土往生を願うことができるのです。四十八願は、単なる個々の誓願の集まりではなく、衆生救済という大きな目的のもと、法蔵菩薩の深い慈悲心と智慧が込められたものです。

参考資料

浄土宗総合研究所 編『【現代語訳】浄土三部経』
真宗聖典編纂委員会 編『真宗聖典』
中村元、福永光司、田村芳朗、末木文美士、今野 達 編『岩波仏教辞典 第二版』
親鸞、金子大栄 校訂『教行信証』
一楽 真『四十八願概説-法蔵菩薩の願いに聞く』

もう一度検索