田村芳朗

田村芳朗（たむら よしろう）

概要

田村芳朗（1921年4月11日 - 1989年3月20日）は、日本の仏教学者、法華宗の僧侶であり、東京大学名誉教授です。千葉県長生郡長生村の浄教寺住職も務めました。東京大学文学部に日本仏教思想講座を設立するなど、仏教学の発展に大きく貢献しました。専門は仏教思想史、特に中世日本の仏教思想であり、本覚思想研究や日本仏教における法華経研究、特に日蓮の研究で知られています。

生涯

出生から修学期

1921年、大阪府大阪市に生まれました。1943年に第三高等学校を卒業後、東京帝国大学文学部梵文学印度哲学科に入学。しかし、同年12月に学徒出陣により応召入隊し、戦地へ赴きました。1946年に復学し、1949年に東京大学文学部印度哲学科を卒業。その後、同大学大学院（旧制）に進学し、1954年に修了しました。

仏教学者として

1956年、東洋大学文学部助教授に就任し、仏教学者としてのキャリアをスタートさせました。1962年には、学位論文『鎌倉新仏教の研究：日蓮思想の周辺』を東洋大学に提出し、文学博士号を取得しました。1965年に教授に昇格し、1970年から1971年までは文学部長を務めました。1972年に東京大学文学部教授に転任し、1982年に定年退官、名誉教授となりました。退官後は、立正大学仏教学部教授に再び就任しましたが、在任中に逝去されました。

研究内容と業績

田村芳朗は、仏教思想史、特に中世日本の仏教思想を専門とし、本覚思想研究（中世仏教史の重要な教義）や、日本仏教史における法華経研究（特に日蓮）の第一人者でした。自身の著書『法華経』のまえがきでは、学徒出陣中に『法華経』のみを携えて激戦を渡った経験が、自身の研究の原点であったと述べています。また、『岩波仏教辞典』（1989年）では編集委員を務め、同辞典は没後に刊行されました。

受賞と栄典

1986年、長年の仏教学研究における功績が認められ、紫綬褒章を受章しました。

指導学生

田村芳朗は多くの学生を指導し、その中には著名な仏教学者もいます。その一人が、末木文美士であり、彼は『岩波仏教辞典』の第2・3版を担当しました。

著作一覧

田村芳朗は、数多くの著書や論文を発表しました。以下に主なものを挙げます。

著作集

『田村芳朗仏教学論集』（全2巻）春秋社

編著・共著

『天台本覚論』 多田厚隆・大久保良順・浅井圓道と校注・解説、「日本思想大系 9」、岩波書店 1973、新装版「原典日本仏教の思想 続2」1995
『日蓮集』（日本の思想 4） 編著、浅井圓道・勝呂信静訳注、筑摩書房 1969、新装版『日蓮：日本の仏教思想』1986
『講座 日蓮』（全5巻） 坂本日深監修、宮崎英修共編、春秋社、1972-1973
『日蓮と法華経』
『日蓮の生涯と思想』
『日蓮信仰の歴史』
『日本近代と日蓮主義』
『日蓮語録』
『日本仏教のこころ：入門日本仏教思想史』 田村圓澄共編、有斐閣選書 1977
『神と仏：源流をさぐる』（仏教思想史 1） 平楽寺書店 1979
『生き死にの道をさぐる：日本仏教の生死観』 有斐閣選書 1980
『仏教内部における対論：日本』（仏教思想史 5） 平楽寺書店 1983
『日本における生と死の思想：日本人の精神史入門』 源了圓共編、有斐閣選書 1997
『法華経を生きる』渡辺宝陽共編、講談社 1984
『[日蓮]]と法華経信仰』[[読売新聞社] 1985
『思想読本 日蓮』法蔵館 1987
『天台神道』（神道大系 論説編 3・4） 末木ほかと共編、神道大系編纂会 1990-1993
『法華思想』（講座大乗仏教 4） 春秋社 1983、新装版 1996
『絶対の真理：天台』（仏教の思想 5） 梅原猛共著、角川書店 1970、改訂版　角川文庫ソフィア 1996
『智顗』新田雅章共著、大蔵出版（人物中国の仏教）1982、新装版 1996
『法華経』（全2巻） 藤井教公訳著、大蔵出版（佛典講座）1988-1992、新装版 2001
『仏教入門 読書マップ』金岡秀友・柳田聖山と鼎談、筑摩書房 1981

論文

CiNii > 田村芳朗
INBUDS > 田村芳朗

記念論集

『田村芳朗博士還暦記念論集 仏教教理の研究』（春秋社 1982年） - 自身の論考と年譜・著作目録を記載。



田村芳朗は、仏教思想史研究において多大な功績を残し、その学問的遺産は今日の仏教学研究に大きな影響を与え続けています。

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