四国旅客鉄道多度津工場

JR四国 多度津工場：四国の鉄道を支える車両基地

香川県多度津町に位置する多度津工場は、JR四国が所有する唯一の車両工場です。多度津駅から徒歩約15分の場所にあり、同社の鉄道車両全般の検査、改造、整備を一手に担っています。その対象は、電車、気動車、機関車、客車、貨車と多岐にわたり、まさに四国の鉄道を根幹から支える存在と言えるでしょう。土佐くろしお鉄道の車両の受託検査も行っています。

歴史

工場の始まりは、讃岐鉄道の開業時に初代の多度津駅に隣接して設置された車両修繕工場でした。現在の多度津駅から離れた場所に工場があるのはそのためです。整備を終えた車両には「多度津工」または「TD」の略号が記されます。

保存車両

多度津工場では、かつて活躍した貴重な車両が保存されています。

C58 333: 準鉄道記念物にも指定されている蒸気機関車。多度津工場で最後に全般検査を受けたSLです。保存状態が良好だったため、動態復元も検討されましたが、費用などの問題で見送られました。アスベスト使用のため、現在は運転台が非公開となっています。
2000系気動車TSE (2001, 2101): JR四国初の特急形気動車。
トキ25797: 貨車

過去には以下の車両も保存されていましたが、現在は別の場所に移設されています。

DF50 1: ディーゼル機関車（準鉄道記念物、四国鉄道文化館に移設）
0系新幹線: 21-141のカットモデル（四国鉄道文化館に移設）
DE10 1: ディーゼル機関車（四国鉄道文化館に移設）
キハ65 34: 気動車（四国鉄道文化館に移設）
ロ481号客車: 客車（準鉄道記念物、うえまち駅に移設）
ワラ1 (1): 貨車（旧太子駅に移設）

近代化産業遺産・登録有形文化財

多度津工場は、その歴史的価値が認められ、2009年に工場内の7つの建物が経済産業省の近代化産業遺産に認定されました。さらに2012年には、これらの建物が国の登録有形文化財にも登録されています。これらの建物の中で最も古いものは1888年（明治21年）に建築されたものであり、日本の鉄道史を語る上で貴重な存在です。

中でも特筆すべきは、現在食堂として利用されている「会食所1号」です。この建物は元々、西条海軍航空隊の格納庫として使用されていたもので、現存する第二次世界大戦以前の格納庫としては数少ない貴重な建造物です。

登録有形文化財

職場一五号
職場一七号
職場三四号
諸舎一号
会食所一号
倉庫四号
倉庫七号

工場公開

多度津工場では、毎年10月の鉄道の日の前後の週末に一般公開が行われています。この際には、多度津駅から工場まで臨時のシャトル列車が運行され、普段は入ることのできない工場内を見学することができます。シャトル列車には、121系電車やキハ47形気動車などが使用されます。多度津駅発着の乗車券、または多度津駅を有効区間に含むフリー切符で乗車できます。多度津工場にはプラットホームがないため、仮設の階段が設置されます。

2009年には、讃岐鉄道開業120周年記念イベントとしても一般公開され、アンパンマントロッコがシャトル列車として使用されました。

多度津工場の歴史

1889年（明治22年）5月：讃岐鉄道丸亀 - 琴平間開通時に多度津駅が開業。同駅構内に讃岐鉄道車両修繕工場が発足。
1904年（明治37年）12月1日：讃岐鉄道が山陽鉄道と合併し、多度津工場に名称変更。
1906年（明治39年）12月1日：山陽鉄道が国有化。
1913年（大正2年）12月20日：多度津駅が移転。旧多度津駅の位置に浜多度津駅（貨物駅）が開業。
1979年（昭和54年）7月1日：浜多度津駅が廃止。
1985年（昭和60年）3月20日：国鉄の全国工場再編成により、多度津工場から多度津車両所に名称変更。
1987年（昭和62年）4月1日：国鉄分割民営化により、四国旅客鉄道に移管。
1988年（昭和63年）：多度津工場に名称変更。
* 2018年（平成30年）2月5日：正面入口脇の建物「本場」が老朽化のため解体。

多度津工場は、四国の鉄道の歴史と技術を今に伝える貴重な場所です。鉄道ファンならずとも、一度は訪れてみたい魅力的なスポットと言えるでしょう。

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