四国軍管区

四国軍管区（しこくぐんかんく）

四国軍管区は、大日本帝国陸軍が第二次世界大戦末期に設置した軍管区の一つです。太平洋戦争が最終局面を迎える中で、本土防衛体制の強化を目的として再編成された日本の軍事組織の一部であり、特定の地理的区域における軍事行政と防衛の責任を担いました。

設立の経緯と背景

四国地方は、1944年（昭和19年）頃までは西部軍管区の一部として、福岡に司令部を置く西部軍の管轄下にありました。しかし、1945年（昭和20年）に入り戦況がさらに悪化すると、大本営は本土決戦に備えた新たな作戦計画として「帝国陸海軍作戦計画大綱」を策定しました。これに基づき、日本国内の軍事組織は大幅な改編が行われます。

この改編の一環として、1945年2月1日には、特に重要視された九州地方の防衛を担う作戦軍として第16方面軍が編成されました。これに伴い、それまで広範な地域を管轄していた西部軍は廃止されることになります。西部軍の廃止後、四国地方を含む旧西部軍管区の一部は、一時的に名古屋に司令部を置く中部軍管区（中部軍管区司令官が第15方面軍司令官を兼任）の管轄下に移されました。

その後、本土決戦準備がさらに進む中で、地域ごとの防衛体制を確立するため、既存の師管区を軍管区に昇格・改編する動きが進みます。四国地方においても、香川県善通寺市に置かれていた善通寺師管区司令部が、地域防衛の中核を担う組織として再編されることとなりました。そして、1945年6月12日、この善通寺師管区司令部は四国軍管区司令部と改称され、四国軍管区が正式に設置されたのです。

組織と役割

四国軍管区は、四国地方の全域、すなわち徳島県、香川県、愛媛県、高知県の四県に相当する地域を管轄区域としました。軍管区司令部は善通寺に置かれました。

この軍管区は、戦局が緊迫する中で、管轄地域における軍事行政（軍政）を統括する役割を担いました。具体的には、徴兵・動員事務、部隊の管理、軍需物資の調達・管理、地域住民に対する防衛指導など、多岐にわたる業務を担当しました。軍管区司令官は、四国地方の防衛作戦を担当する第55軍の司令官が兼任しており、設置当初は第55軍司令官であった原田熊吉中将がその任に就きました。

軍管区司令官は、天皇に直隷する地位にあり、その管轄地域における軍事的な権限は広範に及びました。特に大戦末期においては、国民義勇戦闘隊の組織化や訓練、食糧・資源の確保など、本土決戦に向けた総力戦体制の構築において中心的な役割を果たしました。

四国軍管区は、終戦まで存続し、日本の敗戦に伴い解体されました。

参考文献

秦郁彦編『日本陸海軍總合事典』第2版、東京大学出版会、2005年。
外山操・森松俊夫編著『帝国陸軍編制總覽』芙蓉書房出版、1987年。

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