四輪操舵

四輪操舵（4WS）

四輪操舵（よんりんそうだ、4 Wheel Steering、4WS）は、自動車の操舵システムの一形態であり、特に四輪車の全ての車輪に舵角を与えることで車両の運動性能を向上させる技術です。このシステムにより、車両は高速時の安定性が向上し、低速時には狭い場所での操作性が向上します。また、四輪操舵は三軸（六輪）以上の車両にも対応可能ですが、すべての車軸が操舵可能とは限りません。

概要

通常、自動車はハンドルの操作によって前輪に舵角を与えることで方向を変えますが、その結果、内輪差が大きくなるなどの不都合が生じることがあります。これに対して、四輪操舵では前輪の操舵情報を後輪にも伝えることができるため、内輪差による不都合を低減します。

この技術は古くから存在し、第二次世界大戦前のドイツでは一部の車両に採用されましたが、戦後は一時期消失していました。1980年代末には日本の自動車メーカーが四輪操舵を搭載したモデルを販売しましたが、注目を集めるものの販売は伸び悩みました。その主な理由として、機構の複雑化や重量の増加、価格の高騰が挙げられます。さらに、四輪操舵による動きが「違和感」や「クセ」として受け取られたことも影響しています。具体的には、右左折時に車体後部が思ったより外側に振り出されたり、高速走行時の挙動が不自然に感じられることがあります。日本では特に狭い駐車スペースでの扱いにくさが問題視されることが多いです。

その後、乗用車での採用は減少しましたが、2011年時点では再び日産のスカイラインやフーガ、レクサスの一部モデル、欧州メーカーの車種などで四輪操舵が採用されています。これらの車両では後輪の操舵角を軽減したり、操舵をわずかに遅らせるなどの調整が行われ、より自然な操舵感を実現しています。

四輪操舵の方式

四輪操舵は大きく「同位相方式」と「逆位相方式」の2つに分けられます。*

• - 同位相方式: 舵角を前輪と同じ方向に設定します。これにより、車両の安定性が向上し、高速道路での横滑りを抑えることができます。また、縦列駐車にも効果的です。

• - 逆位相方式: 前輪と逆の方向に舵角を設定し、回転半径を小さくします。ただし、後退時の動きがわかりづらいなどのデメリットもあります。

多くの乗用車では、走行速度やハンドルの操作に応じてこれらの方式を柔軟に切り替えられるシステムが搭載されています。

制御方式

四輪操舵は「機械式」と「電気制御式」に分類されます。

機械式

ステアリングと後輪を直結することで制御する方式です。1987年にホンダのプレリュードに搭載されました。これは信頼性が高いものの、細かい制御ができません。

電気制御式

電子的なアクチュエーターを介して後輪を操舵します。日産のHICASやSuperHICASがその代表例です。この方式では、操舵の動きを簡単に無効化できます。

現代の四輪操舵

現在でも一部の高級車やスポーツカーに四輪操舵が採用されています。メルセデス・ベンツのSクラスやBMWの5シリーズ、7シリーズなどが良い例です。

加えて、四輪操舵が採用される競技もありますが、規制により多くのカテゴリでは禁止されていることが一般的です。

このように、四輪操舵は運転特性の向上や駐車時の利便性をもたらす技術ですが、取り扱いには様々な課題も付随します。また、近年では農業や建設機械にもこの技術が応用されています。今後の技術革新に期待が寄せられています。

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