HICAS

HICAS（ハイキャス）について

HICAS（High Capacity Actively Controlled Suspension）は、日産自動車が開発した革新的な電子制御四輪操舵（4WS/AWS）システムです。この技術は、日産のスカイラインR31型モデルに初めて搭載され、乗用車として世界で初めて商品化された四輪アクティブ操舵システムの一つとして、技術の進歩を示しています。また、自動車技術会の「日本の自動車技術330選」にも選出されています。

HICASの目的と制御システム

HICASの主な目的は、操縦安定性能を向上させることであり、特に高速走行時や急旋回時の安定感を高めるために設計されています。HICASは、操舵時期と角度に関する研究を重ね、舵角比例制御方式に比べて過渡特性まで最適化することで、シャシーの運動性能を向上させるとともに、運転者の感覚に近い操舵を可能にしています。

特に、高速旋回時には後輪が前輪と同じ方向に操舵され、車体後部の横滑りを抑えます。これにより、遠心力と横力がすぐに均衡し、操縦安定性が向上します。従来の舵角比例制御方式では、車体の応答性が抑制されることがあり、これは運転者にとって違和感を生じることがありました。しかし、HICASは後輪操舵のタイミングを前輪操舵より遅らせて制御することで、操縦安定性を向上させています。

また、緊急回避操作などの特定の状況で運転者の意図に迅速に応じるためには高い回頭性が求められます。そのため、改良版であるSUPER HICASでは、位相反転制御を用いて、より敏感に反応する駆動を実現しています。このシステムでは、前輪操舵に同期させて一瞬逆位相に転舵した後、同位相に戻ることで回頭性を高める効果があります。

HICASのバリエーション

HICASはその機能や制御方式によって、いくつかのバリエーションに分かれています。

1. HICAS（初代）
初めて搭載されたR31型スカイラインで使用される能動的後輪操舵機構。後輪のみを操舵するもので、油圧アクチュエータによって実現されています。

2. HICAS-II
後輪操舵角度を最大1度に拡大し、操縦安定性を向上させた改良版。1988年から数モデルに搭載されました。

3. SUPER HICAS
より高度な制御が可能で、ステアリング舵角センサーに基づいた反応を実現。中低速時の応答性が向上しています。

4. 電動SUPER HICAS
油圧を排除し、電動アクチュエータを使用して後輪を操舵。システムの簡素化と応答時間の向上を図っています。

HICASの進展と応用

HICASはスポーツカーだけでなく、ミニバンやセダンなど様々な車種に採用されています。例えば、日産のセレナにはオプションとしてHICASが設定されました。また、R34型系のスカイラインでは、特にGT-Rモデルに搭載されましたが、V35型以降ではその機構が使用されていない場合もあります。さらに、2004年に発売されたフーガは「リアアクティブステア」という名称でHICASを搭載しています。

このように、HICASは長年にわたり進化を続け、使用される機会を広げています。その機構は、運転の楽しみを高めつつ、安全な走行を支える重要な技術の一つとして位置付けられています。運転者の意図に即した反応力は、今後の自動車技術の発展においてもますます注目を集めることでしょう。

まとめ

HICASは、日産が誇る四輪操舵技術の一つで、操縦安定性や回頭性を向上させるための先進的な制御システムです。様々な車両に適用され、改良を重ねながら進化し続けています。

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