回虫

回虫について

回虫はヒトや多くの哺乳類に寄生し、特に小腸に生息する寄生虫であり、線虫に分類されます。特にヒトに寄生するものとして知られるのがヒトカイチュウ（学名：Ascaris lumbricoides）です。この寄生虫は世界で最も一般的なものであり、推定で数十億人が感染しています。本稿では主にヒトカイチュウについて詳しく述べます。

特徴

回虫は雌雄異体で、雌は20から35センチメートル、雄は15から30センチメートルと、雌の方が大きい特性がります。形は環形動物のミミズに似ていますが、実際には線形動物で、体に節は見られません。感覚器も失われ、体の両端には口と肛門があります。なかでも雌は非常に発達した生殖器を持ち、1日に10万から25万もの卵を産むことができます。

生活史

回虫の卵は小腸内で形成されますが、排出された後は外部環境で成熟します。卵は糞便と共に排出され、最適な条件下であれば1ヶ月程度で孵化します。感染経路の多くは、卵が付いた食物の摂取や汚染された指の使用です。卵は胃液の作用で溶けると子虫になり、小腸に到達しますが、そこで成虫にはならずに小腸の壁を通じて血管に入ります。さらに肝臓を経由し、肺に達します。この段階で子虫は約1mmの大きさに成長し、その後気管支を通じて口に戻り、再び小腸に移動して成虫になります。成虫になるまでの期間は約3ヶ月で、寿命は1年から2年程度です。この回虫の生活サイクルの複雑さからその名がつけられました。

歴史と現状

回虫は、古代から人間に寄生しており、紀元前4世紀から5世紀には既に記録が存在します。日本においても、古代の遺跡から回虫の卵が発見されており、中世からはその寄生が一般的でした。特に、人糞尿を肥料として使う農業が普及したことで、寄生が広がっていきました。しかし、20世紀後半には徹底した駆虫対策と衛生の改善が行われ、寄生率は顕著に低下しました。それでも、最近の自然食ブームや発展途上国からの食品輸入により、回虫の寄生のリスクが再び懸念されています。

害

回虫が体内に寄生すると様々な健康障害を引き起こします。栄養素の吸収を妨げ、毒素を排出し、他の臓器に侵入することもあります。数匹の寄生であれば問題が少ないですが、多数寄生する場合には激しい障害を引き起こし、特に幼少期には栄養不足や発育障害が生じることがあります。

対策

回虫による感染を防ぐには衛生環境の向上が欠かせません。日本では戦後、化学肥料の普及が大きな役割を果たしました。回虫卵は高温に弱く、70℃以上では感染力を失います。したがって、十分な加熱が必要です。検便を行うことで、寄生の有無を確認できます。駆虫薬としては、パモ酸ピランテルやメベンダゾールが使用されています。

アレルギーとの関係

近年、回虫の寄生がアレルギー疾患の防止に寄与するという説が提唱されています。しかし、一部の医学者は異なる見解を示しており、回虫については未だに議論が続いています。

その他の回虫

回虫には豚回虫や牛回虫、馬回虫等、多様な種類があり、それぞれ異なる宿主に寄生します。ヒトに対してもさまざまな回虫が影響を与える可能性があり、特に発展途上国では寄生虫感染のリスクが高まっています。

このように、回虫の理解は、公衆衛生や感染症対策において重要な位置を占めています。

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