図書館間相互貸借

図書館間相互貸借（ILL）とは

図書館間相互貸借（Interlibrary Loan、ILL）は、図書館同士が所蔵する資料を相互に融通し合うシステムです。これにより、利用者は自分の所属する図書館にない資料でも、他の図書館を通じて利用することが可能になります。

相互貸借の種類

相互貸借には、主に以下の2種類があります。

1. 現物貸借: 図書館が所蔵する資料の現物を貸し出す方式です。公立図書館で多く用いられます。
2. 文献複写: 図書館資料の一部を複写して提供する方式です。大学図書館で多く用いられます。

相互貸借の流れ

利用者は、まず自分の所属する図書館に利用を申し込みます。図書館は、その資料を所蔵する他の図書館に依頼し、所蔵館は資料を貸し出します。資料は依頼した図書館に送られ、利用者はそこで資料を利用できます。

利用者のメリット

このシステムにより、利用者は以下のメリットを享受できます。

他の図書館が所蔵する図書、視聴覚資料、マイクロフィルム、雑誌記事などの資料を、所蔵館に出向くことなく利用できる。
自宅近くの図書館から、遠方の図書館の資料を利用できる。

注意点

映像資料など、著作権の関係で相互貸借ができない資料もあります。
資料の利用には、複写料や送料などの費用がかかる場合があります。
所蔵館の規定により、貸出期間や館内利用に限られる場合があります。

日本の公立図書館における相互貸借

日本の公立図書館では、主に同一都道府県内の図書館間で相互貸借が行われます。例えば、東京都内の図書館の場合、都内の他の区市町村立図書館や東京都立図書館から資料が送られます。しかし、大規模な図書館に依頼が集中し、相互扶助とは言えない状況もあります。

相互貸借が困難な資料

以下のような資料は、相互貸借が難しい場合があります。

発行部数が少ない資料
発行年が古い資料
特殊な性質を持つ資料
高額な資料
館外持ち出しが禁止されている資料

これらの資料は、館内での閲覧に限られたり、複写に所蔵図書館の許可が必要になります。

裁判事例

過去には、図書館が相互貸借を拒否したことに対する裁判がありました。ある住民が、除籍図書の相互貸借を申請したところ、図書館側が業務に支障が出るとして拒否したため、裁判に発展しました。裁判所は、図書館には相互貸借を拒否する自由裁量はないと判断し、図書館側に賠償を命じました。この裁判は、図書館の相互貸借の重要性を再認識させるものとなりました。

まとめ

図書館間相互貸借は、図書館の相互扶助の精神に基づき、利用者の情報アクセスを向上させる重要なシステムです。資料の所在に関わらず、必要な情報にアクセスできる社会の実現に貢献しています。図書館をより有効に活用するために、相互貸借の仕組みを理解し、活用することが重要です。

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