図画取調掛

図画取調掛の設立とその意義

概要

図画取調掛（ずがとりしらべがかり）は、1885年12月5日に設立された日本の文部省内の部局です。この機関は、東京美術学校の前身であり、日本における美術教育の歴史において重要な役割を果たしました。特に、明治時代における国の美術教育に対するあらたな取り組みを象徴しています。

背景

1880年代半ばの日本では、「国粋保存」の考え方が広まり、伝統的な日本美術や日本画の復興が進んでいました。この時期、西欧における美術教育が影響を持ちながらも、日本国内では1883年に工部美術学校が廃校となり、西洋風の美術教育が後退していく様子が見られます。このような状況下、文部省は日本美術教育の再興のための動きとして「図画教育調査会」を1884年に設立しました。

取調掛の設立

図画取調掛は、同調査会の決議を受けて文部省の専門学務局内に設置されました。この掛の委員には、濱尾新が委員長を務め、岡倉覚三、フェノロサ、狩野友信といった著名な人物が名を連ねました。彼らは西欧の図画教育の実態を調査することを使命としており、特に美術教育の分野において新たな方向性を探るための調査を行いました。

欧州調査とその成果

1886年、岡倉とフェノロサは欧州調査のために出発し、帰国した1887年には日本美術と西欧美術の比較を行いました。その結果、日本の美術教育における毛筆画の重要性が強調され、実利を重視した美術教育を推進する必要があると提唱されました。具体的には、専門家が作成した模写本を用いた模写技術を取り入れることが提案されました。この提案は当時の国粋保存を支持する層に広く支持され、文部省は美術教育の場において毛筆画の使用を認めることになりました。

鉛筆画・毛筆画論争

その後、激しい鉛筆画と毛筆画の論争が行われます。徐々に毛筆画が美術教育の中心に位置づけられるようになりましたが、明治30年代に入ると再び鉛筆画論者が力を回復し、両者の折衷が模索されるようになりました。この論争は、日本の美術教育の発展において非常に重要な局面となりました。

東京美術学校への改称

1887年10月5日に図画取調掛は正式に名称を東京美術学校に改称し、開校の準備が進められました。この美術学校は1889年に正式に開校し、専門的な美術家や教育者の育成を目的とした教育機関として機能することになりました。図画取調掛の設立から東京美術学校開校までの過程は、日本美術教育の進展において大きな意義を持つ出来事でした。

まとめ

図画取調掛は、日本における美術教育の根底を形成した重要な組織であり、その設立は日本の文化と美術に対する新しい価値観の確立につながりました。東京美術学校の誕生は、日本の美術教育の発展に寄与しただけでなく、西洋美術との対話を促す重要なステップとなりました。

もう一度検索