国吉城

若狭の要衝、国吉城：戦国時代の山城

国吉城は、福井県美浜町佐柿に位置する山城で、かつて越前国と若狭国の国境を守る重要な拠点でした。この城は、戦国時代に若狭武田氏の重臣であった粟屋勝久によって築かれ、越前国の朝倉氏からの度重なる攻撃を、見事に防ぎ抜いたことで知られています。

地理的要衝

国吉城は、天王山と御岳山に挟まれた椿峠という、軍事的に重要な地点に位置しています。越前から若狭へ侵入するには、この椿峠を通過する必要があり、国吉城はその要所を抑える形で築かれました。標高197.3メートルの「城山」と呼ばれる場所に築かれたこの城は、天然の地形を活かした堅固な防御力を誇りました。

粟屋勝久による築城と籠城戦

国吉城は元々、常国国吉によって築かれた城を、1556年に粟屋勝久が改修し、本格的な城として築き上げたとされています。勝久は1563年から1569年の間、朝倉氏の軍勢と何度も激戦を繰り広げました。その壮絶な戦いは「国吉城籠城戦」として語り継がれ、『若州三方郡国吉城籠城記』などの軍記物にも記録されています。

織田信長の賞賛とその後

織田信長が越前攻めの際に国吉城に立ち寄った際、勝久の長年にわたる戦いぶりを深く賞賛したという逸話が残っています。その後、勝久は信長の越前攻めに参戦し、朝倉氏滅亡に貢献しました。

山城の構造：居館と山城

近年、発掘調査と整備が進められた結果、国吉城には曲輪、石垣、土塁、堀切などの山城特有の構造物を見ることができます。麓には居館跡とみられる石垣も確認されており、平時には居館で生活し、戦時には山城に籠るという、戦国時代の典型的な城の形態を示しています。居館と山城の両方の遺構が残っている点は、全国的にも珍しいとされています。

居館部

城山の南西麓に位置する居館跡からは、土塁、石垣、石組みの溝、建物の礎石などが発見されています。2004年には、居館跡の正面に大規模な石垣が発見され、16世紀末から17世紀初めに築かれたものと推定されています。このことから、江戸時代に入ってもしばらくの間、城としての機能が維持されていたと考えられています。

山城部

居館跡から山頂へ向かう九十九折りの山道を進むと、中腹には二の丸跡と伝えられる出丸があります。この出丸は食い違いの虎口を持ち、周囲を高土塁で囲んだ堅固な構造となっています。山頂の本丸跡は平坦に開削されており、東と北西に虎口が設けられています。本丸跡からは東西を走る街道を一望でき、敵の動きを把握するのに最適な位置であることがわかります。

本丸の北西虎口からは、5つの曲輪が階段状に連なる連郭式の構造となっています。この構造は若狭の山城の特徴であり、石山城や後瀬山城にも見られます。各曲輪の斜面は急勾配で、高低差も大きく、敵の侵入を阻む堅固な防御となっています。

歴史資料館と続日本100名城

2009年4月には、国吉城の歴史を紹介する「若狭国吉城歴史資料館」が開館し、2017年4月6日には、続日本100名城に選定されました。資料館では、国吉城の歴史や籠城戦に関する資料などが展示されており、より深く国吉城について学ぶことができます。

アクセス

• - 車：舞鶴若狭自動車道 若狭美浜ICから約10分
• - 公共交通機関：JR小浜線 美浜駅から徒歩約25分

国吉城は、戦国時代の歴史と山城の魅力を体感できる貴重な史跡です。ぜひ一度、訪れてみてください。

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