粟屋勝久

粟屋勝久

粟屋勝久（あわや かつひさ）は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将で、若狭武田氏の重臣として活躍しました。特に、武田四老の一人として知られ、若狭国国吉城を拠点に、主家のために尽力しました。

生涯

粟屋氏は清和源氏安田氏の末裔であり、若狭守護である若狭武田氏に仕えました。勝久の前後の系図は明らかでなく、粟屋元隆や粟屋光若との関係も不明ですが、同族と考えられています。越中守を名乗っていましたが、これは粟屋本家の右京亮家の歴代の名乗りであり、右京亮家を再興する意図があったと推測されています。

史料における初見は弘治2年（1556年）です。当時、若狭武田氏は内乱状態にあり、旧守護・武田信豊と、その子で現守護・武田義統が対立していました。義統が内乱に勝利した後も、若狭西部の有力家臣である逸見氏が謀反を起こすなど、領国の統治は困難を極めていました。そこで義統は、婚姻関係のある越前国の守護・朝倉氏に援軍を要請しました。

勝久は、朝倉氏の軍勢を若狭に入れることに反対し、義統の子・武田元明を擁立して抵抗しました。永禄6年（1563年）から毎年、朝倉氏は朝倉景紀を大将として若狭国へ侵攻し、略奪や放火を行いましたが、勝久は国吉城に籠城してこれを撃退しました。しかし、永禄11年（1568年）、元明は朝倉氏によって囚われ、越前に連行され、一乗谷の朝倉館に軟禁されることとなりました。この時、勝久宛に武田元明からの降伏命令が届きますが、勝久はこれを拒否しました。

その後、朝倉氏による若狭支配が始まりましたが、勝久は武田氏家臣として、単独で国吉城に籠り、朝倉氏に抵抗を続けました。織田氏の勢力が拡大すると、元亀元年（1570年）に、他の若狭国人衆と共に織田信長に協力しました。同年4月に織田氏が越前へ出兵した際には、国吉城は信長の宿所となりました。元亀4年/天正元年（1573年）には、朝倉義景率いる朝倉勢が若狭国に侵入し、国吉城が包囲されました。しかし、織田勢が攻勢を開始すると、勝久は越前攻めで一乗谷一番乗りという武勲を挙げ、幽閉されていた旧主の武田元明を救出しました。

天正3年（1575年）7月、勝久は上洛し、元明の助命を嘆願しましたが、武田氏による若狭領有は許されず、若狭は織田氏の重臣・丹羽長秀に任されることとなりました。天正9年（1581年）の天覧馬揃えに見られるように、勝久ら若狭武田氏旧臣は丹羽長秀の与力として存続しました。

本能寺の変後は羽柴秀吉に仕え、馬廻役を務めました。のちに国替えとなり、国吉城には木村常陸介（木村重茲）が入部しました。天正13年（1585年）に死去。

子孫

孫の助太夫は豊臣秀頼に仕え、大坂の陣では豊臣方として戦い、戦後は藤堂高虎に仕官しました。同じく孫の粟屋勝長は臼杵藩に仕え、元文3年（1738年）に粟屋勝興が御鑓奉行に任じられています。子孫は明治維新に至るまで家老職を勤めました。

備考

福井大学の松浦義則名誉教授は、粟屋越中守の名について論考し、現在までに伝わる粟屋勝久の名は、17世紀中頃に成立したとされる仏国寺所蔵の若狭守護武田氏系図の武田元明の注記に「粟屋越中守勝久」と記載されているのみで、戦国期の史料によって勝久の存在を裏付けることはできないと指摘しています。また、勝長と名乗る人物が永禄4年（1558年）に山東郷の土豪田辺氏の所領を安堵しており、天正元年9月にも資料にその名が現れること、天正5年9月の「粟屋越中守請取状」内に粟屋美作守長景、粟屋甚右衞門尉長吉という粟屋家臣が存在することも確認され、「長」の字が勝長からの偏諱であると推測されること、花押からも越中守と勝長が同一人物であるとしています。

参考文献

戦国末期若狭支配の動向
粟屋越中守勝久と国吉籠城戦 福井県郷土誌懇談会

関連項目

* 粟屋氏

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