国宝 (小説)

小説『国宝』について

『国宝』は、著者の吉田修一が作家生活20周年を記念して発表した作品であり、朝日新聞出版の10周年をも祝う一冊でもあります。2017年1月から2018年5月にかけて『朝日新聞』に連載された後、加筆修正が行われ、2018年9月に上下巻として出版されました。この作品は、文化や芸術の深淵に迫る作品であり、多くの読者に感動を与えています。

物語の背景

『国宝』の執筆の契機は、溝口健二の映画『残菊物語』にあったとされています。その中の演目『積恋雪関扉』が、吉田に強く印象を与えたことが制作への第一歩となりました。この作品は、吉田修一がその後も手掛ける高い評価を受ける小説へとつながったことを示しています。

出版以降、『国宝』は第69回芸術選奨文部科学大臣賞や第14回中央公論文芸賞を受賞し、文壇においても高く評価されています。

あらすじ

本作は、任侠に生まれた立花喜久雄と、名門の家に育った大垣俊介の二人が、歌舞伎という芸の世界でそれぞれに道を歩む姿を描いています。喜久雄は、歌舞伎役者としての才能を持ちながら、自身の出生の影を引きずりつつ、芸に献身的に励みます。一方、俊介は家柄が示す通り、素晴らしい環境で育ち、その才能を磨きながらも、名声と期待に押しつぶされそうになっています。二人の運命はやがて交錯し、互いに影響を与え合っていくことになります。芸に対する情熱と葛藤を描いた物語は、読者の心を揺さぶることでしょう。

書籍情報

『国宝』は当初、上下巻として発売され、その後、文庫版としてもリリースされました。詳細な書誌情報は以下の通りです。

• - 小説

- 吉田修一（著）『国宝』朝日新聞出版
- 上巻: 2018年9月7日発売, ISBN 978-4-02-251565-0
- 下巻: 2021年9月7日発売, ISBN 978-4-02-251566-7
- 吉田修一（著）『国宝』朝日新聞出版〈朝日文庫〉
- 上巻: 2021年9月7日発売, ISBN 978-4-02-265008-5
- 下巻: 2021年9月7日発売, ISBN 978-4-02-265008-5

映画化の計画

『国宝』は2025年に映画化が予定されています。監督は李相日が担当し、主演には人気俳優の吉沢亮が抜擢されました。李監督による吉田修一作品の映画化は三度目であり、過去の『悪人』や『怒り』に続く重要なプロジェクトです。映画には渡辺謙や高畑充希などの豪華キャストが名を連ね、期待が高まっています。

漫画化の展開

また、漫画化も進行中で、三国史明の作画による『国宝』が『ビッグコミックスピリッツ』にて連載が開始されることも報告されています。小説を基にしたこのコミカライズも、多くのファンに迎えられることでしょう。

『国宝』は、人生や芸術に挑む若者たちの物語として、多くの人々に愛され続ける作品となるでしょう。

もう一度検索