国家ボリシェヴィキ党

国家ボリシェヴィキ党（ナツボル）：ロシアの民族共産主義政党の軌跡

国家ボリシェヴィキ党（National Bolshevik Party, NBP）、略称ナツボル（Nazbols）は、ロシアを拠点とする極めて特異な政党である。共産主義と民族主義という一見相反するイデオロギーを融合させた「民族共産主義」を掲げ、反プーチン、反米を鮮明に打ち出すことで知られる。その活動は、議会政治への参加よりも、街頭でのデモや直接行動を重視する傾向があり、そのため幾度となく当局と衝突し、非合法化も経験している。

イデオロギー：共産主義と民族主義の融合

ナツボルのイデオロギーは、ボリシェヴィキによるソ連型社会主義への肯定的な評価と、ロシア民族中心主義、そしてネオ・ユーラシア主義という複雑な組み合わせから成る。特に「ロシア人によるユーラシア統一」という目標は、ジョージ・オーウェルの小説『1984年』に登場する「ユーラシア」のネオ・ボルシェヴィズムから着想を得ていると評されることもある。このイデオロギーは、アメリカを最大の敵と見なし、徹底的な反米姿勢を貫いている。

しかし、このイデオロギー、特にネオ・ユーラシア主義については、党内でも意見の相違が存在した。創設メンバーの一人であったアレクサンドル・ドゥーギンは、党内論争の末に離党し、ユーラシア党を結成。ナツボルの機関紙『Limonka』（リモンカ、ロシア語スラングで手榴弾を意味する）は、ドゥーギンを日和見主義者と批判し、ロシア民族をユーラシア諸民族の庇護者とする立場を明確にした。これは、ロシア中心主義的なユーラシア主義への修正と言えるだろう。

党史：過激な活動と非合法化

ナツボルは1992年、複数の政治グループがエドゥアルド・リモノフを指導者として「国家ボリシェヴィキ戦線」を結成したことから始まる。当初は西欧輸入品の不買運動などにも取り組んだものの、大きな成果は得られなかった。過激な行動も目立ち、党員が手榴弾所持容疑で逮捕される事件も発生している。

結成当初、様々な野党連合に参加を試みるものの、過激な姿勢から他の政党と対立し、脱退を繰り返す。特に、ロシア自由民主党との関係は極めて険悪で、激しい誹謗中傷合戦を繰り広げた。

2000年代に入ると、プーチン政権の台頭により、ナツボルも路線変更を余儀なくされた。反プーチン運動に参加し、カスパロフ率いる自由主義政党とも協力する一方、過激な街頭活動は継続。ロシア保健省ビル襲撃事件やプーチン個人事務所占拠未遂事件など、多くの事件を起こし、2005年には非合法化された。しかし、最高裁判所の判断により、党名使用禁止などの制裁付きで存続を認められた。

非合法化後も活動を継続するが、リモノフへの反感が高まり、反西欧・反自由主義を掲げる分派が結成されるなど、党内分裂も深刻化している。2007年には再び非合法化され、現在も活動を継続している。

国際活動：世界各地への影響

ナツボルはロシア国外にも支部を持ち、ラトビア、ウクライナ、アメリカなど世界各地で活動している。これらの支部は、ロシア本部と友好関係にあるとされる。しかし、海外支部も過激な活動で知られており、教会襲撃や大使館襲撃などの事件を起こしている。ラトビアでは、ナチスの第15SS武装擲弾兵師団の元兵士を襲撃するなど、過激な行動を繰り返している。

結論

ナツボルは、その特異なイデオロギーと過激な活動で知られる、ロシアを代表する極右政党である。共産主義と民族主義の融合、反プーチン、反米という明確なスタンスは、ロシア国内外に大きな影響を与えている。しかし、度重なる非合法化や党内分裂、そして過激な活動は、その将来に大きな影を落としている。 今後もその動向から目が離せない存在であると言えるだろう。

もう一度検索