国家人民軍地上軍

国家人民軍地上軍：東ドイツ[[陸軍]]の全貌

国家人民軍地上軍（Landstreitkräfte der Nationalen Volksarmee, LaSK）は、ドイツ民主共和国（東ドイツ）における陸軍であり、人民[[海軍]]（VM）および航空軍（LSK）と共に国家人民軍を構成した重要な軍種でした。本稿では、その歴史的背景、組織構造、任務、そして運用された装備について詳細に解説します。

歴史

1956年1月18日、人民議会は「国家人民軍及び国防省の創設に関する法律」を採択し、再軍備を開始しました。これにより、ドイツ民主共和国国防省が設置され、兵営人民警察（Kasernierte Volkspolizei）が国家人民軍（Nationale Volksarmee）へと再編され、正式に国軍へ昇格しました。1956年3月1日までに改組が完了し、この日は国家人民軍創設の日として記念されました。

兵営人民警察時代の南部管区及び北部管区の2軍管区体制は、国家人民軍地上軍にも引き継がれました。1957年には南北管区を元に、ライプツィヒに司令部を置く第3軍管区（Militärbezirke III）と、ノイブランデンブルクに司令部を置く第5軍管区（Militärbezirke V）が設置されました。1972年12月1日には、ポツダム・ゲルトウに地上軍司令部（Kommando Landstreitkräfte）が設置され、3管区体制に移行すると共に、訓練などを目的とした各種の下級司令部が整備されました。

1990年10月2日、ドイツ再統一の中で、国家人民軍の全組織は解体されました。旧地上軍司令部には、東西両軍の統合任務を帯びた連邦陸軍の陸軍東部司令部（Heereskommando Ost, 後の第4軍団）が設置されました。この陸軍東部司令部隷下の部隊として、ライプツィヒの旧第3軍管区には第7防衛管区（後の第13装甲擲弾兵師団）が、ノイブランデンブルクの旧第5軍管区には第8防衛管区（後の第14装甲擲弾兵師団）が設置され、一部の兵下士官はこれらに残留しましたが、大部分の将兵は職を失いました。

任務

国家人民軍地上軍は、ワルシャワ条約機構軍の一翼を担い、特に在独ソ連軍と共に、ドイツ民主共和国領内で他の同盟国に対する攻撃を食い止める役割を担っていました。

組織構造

1980年代後半までに、国家人民軍地上軍は、従来の第3軍管区と第5軍管区に地上軍司令部を加えた3管区体制に再編成され、解体までこの体制を維持しました。平時の各軍管区には、2個自動車化狙撃兵師団と1個装甲師団が主戦力として属しており、さらに支援部隊や関連する下位部隊や部局が配置されていました。これには、演習場、陸軍野戦病院、下級管区司令部、地域運輸司令部、鉄道運輸司令部、地域物資集積所、軍事裁判所及び検察、通信指揮所などが含まれていました。

戦時体制に移行した場合、各軍管区は第3軍及び第5軍なる2つの地域軍管区に再編成され、西部戦線合同軍総司令官がこれらを指導するとされました。地域軍管区は野戦指導部と地域軍管区司令部によって構成され、部隊編成については国防大臣がその権限を握っていました。

地上軍司令部

地上軍司令部は1972年12月1日、ポツダム・ゲルトウに設置されました。平時には地上軍の総司令部及び参謀本部が設置されていました。戦時体制が宣言された場合、地上軍司令部の人員は参謀本部の決定に従って各地域軍管区の下級司令部へと配置されました。

第3軍管区

第3軍管区は南部軍管区とも呼ばれ、司令部はライプツィヒに置かれていました。隷下には第4自動車化狙撃兵師団、第11自動車化狙撃兵師団、第7装甲師団などが配置されていました。

第5軍管区

第5軍管区は北部軍管区とも呼ばれ、司令部はノイブランデンブルクに置かれていました。隷下には第1自動車化狙撃兵師団、第8自動車化狙撃兵師団、第9装甲師団などが配置されていました。

戦力拡大

国家人民軍では、何度かに分けて地上軍の常備及び予備戦力の拡充が行われました。予備役部隊の募集に際しては、各地で弾薬や装備類、車両等の余剰生産が行われました。完全動員の場合、予備役兵力で構成される動員師団が加わり、正規師団も予備役兵力で強化されました。

主要な部隊規模種別及び兵科種別

兵科種別

自動車化狙撃兵
戦車兵
ロケット兵及び砲兵
防空兵
空挺兵
地上軍航空隊
偵察兵
工兵
通信兵
電子戦兵
化学防護兵

部隊規模種別

師団
連隊
大隊
* 支隊

主な装備

国家人民軍地上軍は、多様な小火器、装甲車両、ロケット砲兵システム、輸送車両、野戦榴弾砲、対空兵器などを運用していました。これらの中には、ソ連製のものが多く含まれていました。

まとめ

国家人民軍地上軍は、東ドイツの防衛を担う重要な組織であり、ワルシャワ条約機構の一翼として、冷戦時代におけるヨーロッパの安全保障に深く関与していました。その組織、装備、そして歴史は、当時の国際情勢を理解する上で欠かせない要素です。

もう一度検索