国府田敬三郎
国府田敬三郎は、日本の福島県に生まれ、アメリカ合衆国カリフォルニア州で目覚ましい成功を収めた農場経営者です。彼は特に、現地に適した高品質な米「国宝ローズ」の開発と大量生産に成功したことで知られ、「ライス・キング」と称されました。その生涯は、単なる実業家の枠を超え、異国の地で数々の困難を乗り越え、同胞である日系人の地位向上にも貢献した人物として記憶されています。
現在のいわき市にあたる福島県磐城郡小川村で、国府田敬三郎は1882年に生を受けました。父は元々、磐城平藩の藩士でしたが、戊辰戦争での敗戦を機に精米業を営むようになっていました。少年時代の敬三郎の心を捉えたのは、同郷の実業家が学校に寄贈した『米国富豪伝』でした。ロックフェラーやカーネギーといったアメリカの成功者たちの物語に感銘を受け、彼の心にはアメリカへの強い憧れが芽生えます。一時家出をしてまで両親に渡米を懇願するも、その願いはすぐには叶わず、福島県師範学校へ進学し、教師の道を選びます。故郷に近い差塩村の小学校では、初代校長も務めるなど、教育者としてのキャリアも積みました。
しかし、敬三郎はアメリカへ渡る夢を諦めきれませんでした。1907年、彼は教育視察という名目を使い、ついにサンフランシスコへと渡ります。異国の地での生活は厳しく、当初はブランケ担ぎのような肉体労働で生計を立てました。その後、日系漁業従事者が多かったサンペドロで缶詰工場を立ち上げましたが、経営は順調にいかず、すぐに他社に譲渡しています。成功への道はまだ見えない状態でした。
様々な経験を積む中で、敬三郎は日本で父が営んでいた米に関わる事業に目を向け、カリフォルニアでの米作を決意します。1920年、彼はコルサで約1,800エーカーの土地を借り、妻や多くの協力者とともに米作を開始しました。当時のカリフォルニアでの米作は未開拓な分野であり、敬三郎は自然災害や世界恐慌といった多くの困難に直面します。しかし、彼は従来の枠にとらわれない発想でこれを乗り越えようとしました。例えば、広大な水田への種まきに飛行機を利用するという、当時としては極めて斬新な方法を提案し実行しました。また、収穫した米の品質を保つために乾燥機や倉庫といった最新の設備投資も惜しみませんでした。これらの努力と革新的な試みが実を結び、彼の農場はサウスドスパロスで約10,000エーカーにも及ぶ広大な規模に成長しました。さらに、米作が難しいとされていたカリフォルニア州南部のサリナスでの栽培にも成功するなど、着実に成果を上げていきました。
順調な事業拡大の最中、1941年12月に太平洋戦争が勃発し、アメリカ政府による日系人の強制収容が始まります。国府田一家もその対象となり、広大な農場を信頼できる顧問弁護士に委ね、コロラド州のアマチ収容所へ送られました。収容所生活を送る中、弁護士から思わぬ連絡が入ります。農場の土地は息子名義でしたが、実質的な支配権が敬三郎にあるとして、これが外国人土地法に違反するとの指摘が検事局からなされ、彼は起訴されることになったのです。この訴訟は10万ドルの罰金を支払うことで決着しました。
1945年の終戦後、敬三郎が自身の土地に戻ると、さらなる衝撃を受けます。委託していた土地の3分の2が無断で売却されてしまっていたのです。しかし、彼は再び立ち上がります。カリフォルニア州を相手取り損害賠償を請求し、法廷で争った結果、勝訴して得られた賠償金を元手に、新たに土地を購入して農場を再開しました。
農場を再開した敬三郎は、これまでの米の品種に改良を重ね、日本の米とほぼ変わらない高品質な品種の開発に成功しました。これが、現在も代表的なカリフォルニア米として知られる「国宝ローズ」です。この米は発売されると、特に現地の日本人や日系人から絶大な支持を得ました。
敬三郎の貢献は農業だけにとどまりません。彼は戦前から日系移民にとって大きな壁となっていた「外国人土地法」の撤廃を目指し、マイク正岡らとともに「帰化権獲得同盟」を結成し、全米規模での運動を展開しました。この運動は実を結び、1952年にはカリフォルニア州最高裁で「外国人土地法は違憲である」との画期的な判決を勝ち取ることに成功します。また、日系一世の帰化権獲得に向けたロビー活動を資金面で支援したり、日本の農村部の青年たちをカリフォルニアへ受け入れる事業に多額の私財を投じるなど、日系人の権利向上と待遇改善のために尽力しました。さらに、東京銀行のカリフォルニア支店設立を支援し、日系人が融資を受けやすくするための環境整備にも貢献しました。これらの功績が認められ、1960年には日本政府より勲四等を授与されました。
1964年、敬三郎は妻とともに日本へ一時帰国している最中に脳卒中で死去しました。82歳でした。彼の死後、日本政府からはさらに勲三等瑞宝章が贈られ、その生涯にわたる功績が改めて称えられました。国府田敬三郎は、異国の地で農業を成功させ、困難に立ち向かい、そして同胞のために尽くした、真の「ライス・キング」として、今なお多くの人々に影響を与えています。
若き日の憧れと渡米
現在のいわき市にあたる福島県磐城郡小川村で、国府田敬三郎は1882年に生を受けました。父は元々、磐城平藩の藩士でしたが、戊辰戦争での敗戦を機に精米業を営むようになっていました。少年時代の敬三郎の心を捉えたのは、同郷の実業家が学校に寄贈した『米国富豪伝』でした。ロックフェラーやカーネギーといったアメリカの成功者たちの物語に感銘を受け、彼の心にはアメリカへの強い憧れが芽生えます。一時家出をしてまで両親に渡米を懇願するも、その願いはすぐには叶わず、福島県師範学校へ進学し、教師の道を選びます。故郷に近い差塩村の小学校では、初代校長も務めるなど、教育者としてのキャリアも積みました。
しかし、敬三郎はアメリカへ渡る夢を諦めきれませんでした。1907年、彼は教育視察という名目を使い、ついにサンフランシスコへと渡ります。異国の地での生活は厳しく、当初はブランケ担ぎのような肉体労働で生計を立てました。その後、日系漁業従事者が多かったサンペドロで缶詰工場を立ち上げましたが、経営は順調にいかず、すぐに他社に譲渡しています。成功への道はまだ見えない状態でした。
米作への転換と革新
様々な経験を積む中で、敬三郎は日本で父が営んでいた米に関わる事業に目を向け、カリフォルニアでの米作を決意します。1920年、彼はコルサで約1,800エーカーの土地を借り、妻や多くの協力者とともに米作を開始しました。当時のカリフォルニアでの米作は未開拓な分野であり、敬三郎は自然災害や世界恐慌といった多くの困難に直面します。しかし、彼は従来の枠にとらわれない発想でこれを乗り越えようとしました。例えば、広大な水田への種まきに飛行機を利用するという、当時としては極めて斬新な方法を提案し実行しました。また、収穫した米の品質を保つために乾燥機や倉庫といった最新の設備投資も惜しみませんでした。これらの努力と革新的な試みが実を結び、彼の農場はサウスドスパロスで約10,000エーカーにも及ぶ広大な規模に成長しました。さらに、米作が難しいとされていたカリフォルニア州南部のサリナスでの栽培にも成功するなど、着実に成果を上げていきました。
戦争と強制収容、そして再起
順調な事業拡大の最中、1941年12月に太平洋戦争が勃発し、アメリカ政府による日系人の強制収容が始まります。国府田一家もその対象となり、広大な農場を信頼できる顧問弁護士に委ね、コロラド州のアマチ収容所へ送られました。収容所生活を送る中、弁護士から思わぬ連絡が入ります。農場の土地は息子名義でしたが、実質的な支配権が敬三郎にあるとして、これが外国人土地法に違反するとの指摘が検事局からなされ、彼は起訴されることになったのです。この訴訟は10万ドルの罰金を支払うことで決着しました。
1945年の終戦後、敬三郎が自身の土地に戻ると、さらなる衝撃を受けます。委託していた土地の3分の2が無断で売却されてしまっていたのです。しかし、彼は再び立ち上がります。カリフォルニア州を相手取り損害賠償を請求し、法廷で争った結果、勝訴して得られた賠償金を元手に、新たに土地を購入して農場を再開しました。
「国宝ローズ」と日系社会への貢献
農場を再開した敬三郎は、これまでの米の品種に改良を重ね、日本の米とほぼ変わらない高品質な品種の開発に成功しました。これが、現在も代表的なカリフォルニア米として知られる「国宝ローズ」です。この米は発売されると、特に現地の日本人や日系人から絶大な支持を得ました。
敬三郎の貢献は農業だけにとどまりません。彼は戦前から日系移民にとって大きな壁となっていた「外国人土地法」の撤廃を目指し、マイク正岡らとともに「帰化権獲得同盟」を結成し、全米規模での運動を展開しました。この運動は実を結び、1952年にはカリフォルニア州最高裁で「外国人土地法は違憲である」との画期的な判決を勝ち取ることに成功します。また、日系一世の帰化権獲得に向けたロビー活動を資金面で支援したり、日本の農村部の青年たちをカリフォルニアへ受け入れる事業に多額の私財を投じるなど、日系人の権利向上と待遇改善のために尽力しました。さらに、東京銀行のカリフォルニア支店設立を支援し、日系人が融資を受けやすくするための環境整備にも貢献しました。これらの功績が認められ、1960年には日本政府より勲四等を授与されました。
1964年、敬三郎は妻とともに日本へ一時帰国している最中に脳卒中で死去しました。82歳でした。彼の死後、日本政府からはさらに勲三等瑞宝章が贈られ、その生涯にわたる功績が改めて称えられました。国府田敬三郎は、異国の地で農業を成功させ、困難に立ち向かい、そして同胞のために尽くした、真の「ライス・キング」として、今なお多くの人々に影響を与えています。
もう一度検索
【記事の利用について】
タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。
【リンクついて】
リンクフリーです。