国引き神話

国引き神話の概要

国引き神話（くにびきしんわ）は、出雲国に伝わる特異な神話で、その内容は『出雲国風土記』に記されています。この神話には、出雲国の誕生にまつわる物語が語られており、神々がどのように土地を形成したのかを示しています。

神話の背景

この神話は、八束水臣津野命（やつかみずおみつぬのみこと）によって語られます。彼によると、出雲国は当初「狭布（さの）の稚国」として、狭い土地からスタートしました。具体的には、国の形が東西に細長く、布のようだったとされています。この状態に対して、八束水臣津野命はあまりにも小さな土地を見て失敗作としたのです。

国を引き寄せる壮大な行動

この神話のクライマックスとして、八束水臣津野命が国を引き寄せるために「三身の綱」を使用します。彼は、遠くにある「志羅紀」や「北門佐岐」などの余った土地を裂いて、四回にわたって引っ張ります。その結果、出雲国は現在の島根半島として結びあわされることになります。

• - 志羅紀の三埼を引いた綱は、薗の長浜（現：稲佐の浜）へ。
• - 三穂の埼を引いた綱は、夜見の嶋（現：弓浜半島）へ。

国引きを終えた後、八束水臣津野命は大地に杖を突き刺し、その場所には「意宇の杜（おうのもり）」という森が繁茂したとされています。

比定地の解釈

国引き神話に登場する地方名には、多くの解釈があり、各地に実在の場所が挙げられています。たとえば、以下のような場所が比定地として挙げられています。

• - 志羅紀：新羅国
• - 去豆：出雲市小津町にある許豆神社
• - 支豆支の御埼：出雲市大社町日御碕
• - 北門：出雲の日本海側の港と解釈

他にも、出雲市大社町鷺浦や松江市鹿島町北講武など、多くの地域が神話の比定地として考えられています。それぞれの解釈には賛否がありますが、神話の背景を紐解く手がかりとなっています。

さまざまな解釈の存在

国引き神話には、出雲外から土地を引き寄せたという解釈から、対照的に内部の土地の小規模な話として捉える意見も存在します。また、北門を越後付近や石川県と解釈する説や、隠岐を含めた解釈など、議論が続いています。

国引き神話は、神々の力を通じて土地が形成されたという日本の古代の世界観を映し出しており、多くの人々にとって今なお語り継がれる重要な物語です。神話に描かれた地名や場所の特定は、出雲国の土地への理解を深める手助けとなっています。歴史に名を刻んだこの神話を通じて、古代の人々の思考や文化が今でも息づいていることを示しています。

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