チェコと
スロバキアにおける国有会社(
チェコ語: Státní podnik、
スロバキア語: Štátny podnik)は、両国における重要な企業形態の一つです。本稿では、その起源から現代に至るまでの変遷を辿り、関連する国営会社(
チェコ語: Národní podnik、
スロバキア語: Národný podnik)についても解説します。
国有会社の設立と変遷
国有会社は、
1980年代後半の社会主義圏における経済改革の一環として、
1988年1月7日に
チェコスロバキア社会主義共和国で制定された国有会社設立法によって誕生しました。この法律は、社会主義経済の効率化と国民生活の向上を目指し、企業に一定の経営権を認めつつ、労働者と企業が選出した理事による自主的な企業統治を促すものでした。ただし、共産党による国家計画という制限下での運営でした。
民主化後の
1990年5月1日には、社会主義に関する規定が削除された改正法が施行され、
スロバキアではこの改正法が現在も適用されています。一方、
チェコでは、1997年に
商業登記を義務付けるなどの再改正法が施行されました。現在の国有会社は、日本における
公社に近い形態で、公益事業に限定され、政府省庁や地方機関が設立します。企業の資産は政府が所有しますが、経営権は企業に委ねられています。予算は国または地方機関の承認が必要です。
国有会社の
民営化も進められており、政府出資の株式会社への転換や株式の民間売却が行われていますが、交通、エネルギー、軍事、林業、研究開発などの分野では、依然として国有会社が運営されています。
公団(státní organizace)も、国有会社設立法の規定を準用した、国有会社に準じた企業体です。具体的には、旧
チェコスロバキア国家鉄道公団から転換した企業体や、その事業を承継した企業体が該当します。
国営会社(Národní podnik)の歴史
第二次世界大戦後、
チェコスロバキア政府は国有化政策を推進し、鉱山、重工業、銀行、保険などの産業を対象としました。この際、国有化された企業の形態として「国営会社」が定められました。
1951年には、国内のほぼ全ての企業が国営会社に転換されました。
国営会社は、国家経済単位として国家予算により運営され、中央省庁や地方行政機関である国民委員会が管理しました。省庁は、各企業の業務を決定し、効率化のために企業グループの統合や再編を頻繁に行いました。労働者の配置や労務管理は国民委員会が行い、企業の代表者は国民委員会と労働組合の協議で決定されました。
1988年以降は、政府による経営管理を廃した国有会社への転換が進められ、
1991年以降は
民営化政策により、小規模企業は競売で、大規模企業はクーポンと引き換えで株式を発行する方法(クーポン
民営化)で
民営化が進められました。この
民営化政策は、連邦制解消後の
チェコと
スロバキアの両国に引き継がれました。
現在、国営会社を規定した
1945年の大統領令は有効であり、現存する国営会社は
チェコのビール製造販売業であるブジェヨヴィツェ・
ブドヴァル国営会社(Budějovický Budvar, n.p.)のみです。
現在の主な国有会社
チェコ
チェコ郵便国有会社(Česká pošta)
ディアモ国有会社(Diamo):鉱山事業会社
チェコ共和国森林国有会社(Lesy České republiky)
プラハ空港国有会社(Letiště Praha)
クラドルビ・ナド・ラベム国立種畜農場(Národní hřebčín Kladruby nad Labem)
チェコ共和国航空交通管制国有会社(Řízení letového provozu ČR)
国家切手印刷所国有会社(Státní tiskárna cenin)
スロバキア
ニトラ農業研究所国有会社(Agroinštitút Nitra)
スロバキア共和国森林国有会社(Lesy Slovenskej republiky)
スロバキア共和国航空交通サービス国有会社(Letové prevádzkové služby Slovenskej republiky)
クレムニツァ貨幣鋳造所国有会社(Mincovňa Kremnica)
スロバキア共和国軍有林地国有会社(Vojenské lesy a majetky SR)
まとめ
国有会社は、
チェコと
スロバキアの経済において重要な役割を果たしており、その変遷は両国の歴史と密接に結びついています。社会主義時代から
民営化が進む現在に至るまで、国有会社はそれぞれの時代背景に合わせた形に変容を遂げてきました。現在でも、公益性の高い分野を中心に国有会社が運営されており、今後の動向が注目されます。
関連項目
国有企業
公社(日本)
計画経済
チェコスロバキア共産党