国民党 (スペイン)

スペイン国民党：歴史、組織、選挙結果

スペインの国民党（Partido Popular、略称：PP）は、社会労働党と並ぶ二大政党の一つです。本稿では、その歴史、組織、選挙結果について詳細に解説します。日本の外務省はこれを「民衆党」と呼称していますが、ここではスペイン語表記の「国民党」を使用します。

歴史：フランコ体制から現代スペイン政治の中核へ

国民党の起源は、1976年に設立された国民同盟（Alianza Popular、AP）に遡ります。フランコ体制下の政治家、マヌエル・フラガ・イリバルネを中心とした7名によって結成されました。フランコ死後、スペインは君主制へ回帰し、民主化が進展。国民同盟は当初、保守層からの支持獲得を目指しましたが、改革の主導権を握ったスアレス首相率いる民主中道連合（UCD）に敗れ、初期の選挙では苦戦を強いられました。

しかし、1980年代に入ると、UCDの分裂に乗じて保守票を吸収。1989年には党名を国民党に変更し、ホセ・マリア・アスナールを党首に選出、中道右派への路線転換を図りました。1996年の総選挙で勝利し、アスナール政権が発足。高い経済成長率を達成し、2000年の総選挙でも再選を果たしました。

アスナール政権は、バスク祖国と自由（ETA）への強硬姿勢やイラク戦争への早期参加など、親米路線を鮮明にした一方、2004年のマドリード列車爆破テロ事件をきっかけに、国民の支持を失い政権から転落しました。テロ事件への対応やイラク派兵への批判が、国民の不信感を招いたことが敗因の一つとされています。

その後、2011年の総選挙で政権奪回を果たしたものの、2013年には党幹部の汚職疑惑が表面化し、国民の反発を招きました。以降も、低迷が続き、2019年の総選挙では過去最低の議席数に落ち込むなど、厳しい状況が続いています。2023年7月の総選挙では第1党となりましたが、過半数には届かず、政権樹立の道筋は不透明です。

組織：全国組織と地方支部

国民党は全国執行部の下、スペイン全土の自治州と自治市に地方支部を有する組織構造を持っています。地方組織は、地方選挙において重要な役割を果たしています。党創設者であるマヌエル・フラガ・イリバルネや、名誉議長を務めるホセ・マリア・アスナールなど、党の歴史に貢献した著名な政治家が多く存在します。

選挙結果：浮き沈みの激しい政権与党

国民党は、総選挙、地方自治体選挙、欧州議会選挙など、様々な選挙で活動しています。その選挙結果は、時代背景や社会情勢を反映し、常に変動しています。近年は、政権与党と野党の間を行き来する状況が続いており、今後の動向が注目されています。

参考文献

若松隆『スペイン現代史』岩波新書、1992年
立石博高編『スペイン・ポルトガル史』山川出版社、2000年
* Gilmour, John, Manuel Fraga Iribarne and the Rebirth of the Spanish Conservatism 1939-2000, The Edwin Mellen Press, 1999.

国民党はスペイン現代史において重要な役割を果たしてきた政党であり、その動向は、今後もスペイン政治の行方を左右するでしょう。

もう一度検索