国民議会 (モルディブ)

モルディブ国民議会：島国の立法府と大統領との複雑な関係

モルディブ共和国の立法府である国民議会（People's Majlis）は、同国の政治において中心的な役割を担っています。1965年の設置以来、その制度は幾度かの変遷を経ており、特に2008年の憲法改正は、選挙制度に大きな変化をもたらしました。

議会構成と選挙制度

国民議会の議員定数は77名で、任期は5年です。解散の可能性も存在します。選挙制度は単純小選挙区制を採用し、全議員を国民の直接選挙で選出します。選挙権は18歳以上のモルディブ国民に認められますが、憲法により非ムスリムは国籍を取得できないため、選挙権の行使はムスリム国民に限定されています。

被選挙権を得るためには、いくつかの条件を満たす必要があります。具体的には、モルディブ国民であること、外国籍を持たないこと、スンナ派ムスリムであること、18歳以上であること、そして行為能力を有することです。さらに、外国人からモルディブ国民となった者は、国籍取得後5年間は被選挙権が制限されます。また、債務不履行者、12ヶ月以上の刑期に服している者、刑期終了から3年経過していない者、そして司法官も被選挙権を認められません。

2008年憲法改正以前は、定数50名で、首都マレと20の環礁からなる21選挙区で、1選挙区から2名ずつ選出する単純小選挙区制（単純非移譲式投票）と、大統領が任命する8名によって構成されていました。

国民議会の権限と役割

国民議会は、モルディブの立法権を掌握しています。憲法改正、イスラム教義に反しない法律の制定・改正・廃止、行政権の監督、予算の承認、独立機関に関する決定、国民投票の実施など、幅広い権限を有します。ただし、イスラム教義に反する法律の制定は禁じられています。

三権分立と大統領との関係

モルディブの憲法では、立法権を国民議会、行政権を大統領、司法権を裁判所にそれぞれ委ねています。大統領は国民議会と同様に直接選挙で選出されますが、議会の選挙結果と大統領選挙の結果は直接的にリンクしません。大統領は、1回目の投票で過半数の票を獲得した候補、または1回目の投票で過半数に達しなかった場合は上位2名による決選投票の勝者となります。

内閣は、大統領、副大統領、大臣、司法長官で構成され、副大統領を除くメンバーは国民議会の承認が必要です。「首相」に相当する地位は存在しません。このことから、モルディブの政治体制は、大統領制でありながら、典型的な権力分立システムとは言いがたく、大統領と議会多数派との対立が生じやすい構造となっています。

2008年の初の大統領選挙では、モハメド・ナシードが勝利しましたが、決選投票での勝利であり、議会での安定した多数派を確保することは困難でした。翌年の総選挙でも、ナシード率いるモルディブ民主党は野党に敗れ、大統領と議会の「ねじれ」が発生しました。このことは、後にナシード政権の混乱と崩壊の一因となりました。

過去の総選挙

国民議会選挙は、2005年、2009年（現行憲法下初）、2014年などに行われています。選挙結果によっては、大統領と議会の協力関係が大きく左右され、モルディブの政治状況に影響を与えます。

まとめ

モルディブ国民議会は、同国の政治制度において重要な役割を担う一方で、大統領との関係は複雑で、しばしば対立が生じる可能性があります。選挙制度や権限、大統領との関係を理解することで、モルディブの政治システムをより深く理解することができます。この複雑な関係が、モルディブの政治的安定性に影響を与え続けることは間違いありません。

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