国民軍

国民軍（こくみんぐん）

国民軍とは、近世における新たな軍隊の形態であり、特にナポレオン・ボナパルトによって初めて大規模に運用されたものです。このシステムは、従来の騎士や武士といった貴族階級や、契約によって雇われた傭兵などの「専門集団」に代わるもので、志願兵を基礎としています。国民軍の導入は、近代戦において市民の参与や、国民全体の総力戦を重視する方向へと軍の運用を変革しました。

従来の封建制度では、戦争は貴族に属する騎士や武士が指揮を取り、時折徴兵された領民や雇われた傭兵が参加する形が主流でした。しかし、これにはいくつかの問題がありました。強制的に徴兵された素人の領民は士気や能力が低く、一方で傭兵は経済的な動機に依存していたため、報酬の未払いがあるとすぐに撤退してしまうことがしばしばでした。このように、戦場での信頼性と一貫性に欠ける環境が、軍隊の不安定要因となっていました。

フランス革命戦争の際、フランス軍は義勇兵が満期を迎えて帰郷し、常備軍は給与の未払いによって士気を失っていました。この状況を受け、国民公会は30万人の徴兵令を発表しましたが、実際にはほとんど集まらず、逆にヴァンデ地方での反乱が勃発しました。こうした背景から、志願兵を基本とする国民総動員令が発布され、これによって新たな形の国民軍が形成されました。

ナポレオンはこの新しい軍隊の練度の低さを戦略的手法で補い、見事な勝利を収めました。この成功により、国民軍という考え方は広がり、欧米を中心にこの形態が主流として受け入れられるようになりました。以後、国民皆兵や徴兵制度が採用されることで、国家は一層市民の戦争への関与を促すようになりました。

国民軍は、国民一人ひとりが国を守る戦士としての役割を持つことで、国民意識の高まりを促進し、またとりわけ戦争の形態を変革させた点が特徴です。この新しい軍隊の形態は、その後の戦争のあり方に多大な影響を及ぼしました。国民軍の概念は、特に近代以降の西洋における軍事制度の近代化において、重要な役割を果たすことになります。

関連項目

• - フランス革命戦争
• - 国家総力戦
• - 国民皆兵
• - 徴兵
• - 士官学校

外部リンク

• - 『国民軍』 - コトバンク

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