国民防衛軍事件

国民防衛軍事件

国民防衛軍事件（こくみんぼうえいぐんじけん）は、1951年1月に朝鮮戦争の最中、韓国の国民防衛軍の幹部たちが供給された軍事物資や食糧を横領したことに端を発する。これにより、約9万人もの韓国軍の兵士が命を落とすという深刻な結果を招いた。

国民防衛軍の設立

国民防衛軍は、1950年12月21日公布の「国民防衛軍設置法」に基づいて設置された。これは、戦況の悪化に伴い、通常の徴兵制度では兵力を確保できない状況を打開するために急遽創設されたものである。当初、韓国軍が北朝鮮軍の奇襲攻撃を受け、大きな損失を被っていた時期であり、国民防衛軍は約50万人の将兵によって構成された。

設立当初は、軍事の経験がない人々が中心であり、指揮統制も未熟だった。司令官には金潤根、副司令官には尹益憲が任命されたが、二人は軍事的な経歴が乏しかったため、組織運営は混乱を極めていた。また、物資の調達が十分になされず、兵士たちの動員や訓練も不備が多かった。

横領事件の発生

1951年1月4日、北朝鮮及び中国軍の攻勢が強まる中、韓国軍は「1・4後退」作戦として後退を余儀なくされる。この際、国民防衛軍の幹部たちは、国民防衛軍用に供給されるはずだった補給物資を不正に処分して着服した。この結果、極寒の中で後退する将兵に対する物資供給が不足し、9万人以上の餓死者や凍死者が出た。この悲劇は「死の行進」と呼ばれることになる。

調査と結果

事件は国会で暴露され、真相調査団が設置された。その結果、着服された金額は国庫金23億ウォン、糧穀5万2000石に上ることが判明した。また、李承晩大統領の政治資金に一部が流用されていたことも明らかになり、事件の中心人物として申性模国防部長官と李始榮副大統領が辞任に追い込まれた。この事件は国民に大きな衝撃を与え、韓国陸軍内部では李承晩への不満が高まった。

結末とその影響

1951年4月30日、国会は国民防衛軍の解散を決定し、5月12日に正式に解体された。その後、司令官と副司令官を含む主要な関係者が裁判にかけられ、8月12日には大邱郊外で処刑されることとなった。この事件は韓国軍の士気を大きく低下させ、李承晩政権への反感を助長する結果となった。

国民防衛軍事件は、戦争の混乱を背景に起こった人間の非道を露呈させ、多くの無辜の命が失われた痛ましい悲劇として語り継がれています。

もう一度検索