国盗り物語 (NHK大河ドラマ)

NHK大河ドラマ『国盗り物語』：戦国の雄たちの生き様

1973年、NHK大河ドラマの第11作として放送された『国盗り物語』は、司馬遼太郎の同名小説を原作とする歴史ドラマです。全51回にわたる壮大な物語は、美濃一国を制覇した斎藤道三、天下統一を目指す織田信長、そして彼に仕えながらも本能寺で反旗を翻す明智光秀といった、戦国時代のキーパーソンたちの波乱に満ちた生涯を描いています。

複数の司馬遼太郎作品を融合したドラマ

本作品は単に『国盗り物語』の翻案にとどまらず、司馬遼太郎の『新史太閤記』『功名が辻』『尻啖え孫市』『梟の城』など、複数の作品から要素を取り込み、大野靖子によって脚色が施されています。道三と信長の視点が交互に描かれる構成も、原作小説の特徴を受け継いでいます。チーフディレクターの斉藤暁は、司馬遼太郎の戦国時代に関する作品を網羅し、現代的な解釈を加えることで、時代を超えて共感できるドラマを目指したと語っています。

革新的な撮影技術と個性的なキャスティング

『国盗り物語』は、大河ドラマにおいて初めてハンディカメラが使用された作品でもあります。これにより、従来の俯瞰的な映像とは異なる、臨場感あふれるダイナミックな演出が可能になりました。例えば、桶狭間の戦いのシーンでは、カメラマンが車椅子に乗り、スタジオセットに突入することで、織田軍の兵士の視点がリアルに再現されています。この革新的な撮影手法は、セカンドディレクターの村上祐二も高く評価しています。

キャスティングも大きな話題となりました。信長役には高橋英樹、道三役には平幹二朗、そして光秀役には近藤正臣といった、当時の人気俳優陣が起用されています。特に高橋英樹の信長は、偉人像というよりも、人間味あふれる「ワル」としての信長像として描かれ、大きな反響を呼びました。また、無名だった火野正平が秀吉役を演じ、のちの大スターへの登竜門となりました。西田敏行も本作で重要な役を演じています。

物語の構成と時代描写

道三は物語の約3分の1を占める第18回で自害し、以降は信長が主人公として物語の中心を担います。物語は合戦シーンの迫力ある描写や、当時の地域の様子をフィルムで撮影することで、歴史の重みとリアリティを演出しています。これは前年の『新・平家物語』とは対照的な手法で、本作の大きな特徴となっています。ドラマのラストシーンでは、岐阜城や信長の墓、そして近代的な観光地となった大坂城が映し出され、時代の変遷が象徴的に描かれています。

高い視聴率と昭和天皇の視聴

『国盗り物語』は高い視聴率を記録しました。初回視聴率は27.5%、最高視聴率は29.9%、平均視聴率は22.4%（関東地区）を記録しています。驚くべきことに、昭和天皇も本作の大ファンであり、スタジオ収録を訪問し、桶狭間出陣前夜のシーンを直接観覧されたという逸話も残っています。

主要登場人物

本作には、斎藤道三、織田信長、明智光秀の三者を軸に、数多くの戦国武将や人物が登場します。それぞれのキャラクターは、歴史的史実に基づきながらも、ドラマ独自の解釈が加えられ、魅力的に描かれています。例えば、信長の残忍さとカリスマ性、光秀の知性と葛藤、道三の狡猾さと野心などが、複雑で人間味あふれる描写で表現されています。

映像ソフトと放送史

残念ながら、通常放送分のマスターテープは現存していませんが、総集編の映像はNHKアーカイブスで視聴可能です。また、一部の回は視聴者からの提供によって残っており、NHKはさらなる提供を呼びかけています。

『国盗り物語』は、歴史的考証に基づいた緻密な脚本と、革新的な撮影技術、そして個性豊かな俳優陣の熱演によって生み出された、まさに大河ドラマの傑作と言えるでしょう。その魅力は、時代を超えて多くの視聴者の心を捉え続けています。

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