国立芸術センター管弦楽団

国立芸術センター管弦楽団

カナダの首都オタワに位置する国立芸術センター管弦楽団（National Arts Centre Orchestra, 略称NACO）は、カナダにおける重要な音楽団体のひとつです。この室内オーケストラは、同国の主要な文化施設である国立芸術センター（National Arts Centre, NAC）を主要な活動拠点としており、「オタワ・ナショナル・アーツ・センター管弦楽団」とも呼ばれています。

設立と歴史

楽団の歴史は、1969年に国立芸術センターが華々しく開場したことに始まります。センターの設立と同時に、NACOは専属のレジデント・オーケストラとして誕生しました。以来、NACのコンサートホールで行われる定期演奏会シリーズや、センター主催のオペラ公演において、演奏活動の中核を担っています。

楽団の活動範囲は、本拠地であるオタワにとどまりません。カナダという広大な国土を持つ国のオーケストラとして、国内各地への広範なツアーを積極的に実施しています。これにより、地理的に離れた地方都市を含むカナダ全土の音楽愛好家に、質の高いオーケストラ演奏を直接届ける機会を創出しています。また、NACOは次世代の音楽家育成や、幅広い層への音楽教育にも強い関心を持ち、様々な教育プログラムやアウトリーチ活動を展開しています。これらの活動は、カナダ国内のクラシック音楽文化の振興と普及に大きく貢献しています。

歴代の指揮者

国立芸術センター管弦楽団の芸術水準は、その長い歴史を通じて多くの著名な音楽家たちによって築き上げられてきました。設立当初を支えたジャン＝マリー・ボーデに続き、長年にわたり楽団の音楽監督を務め、後に桂冠指揮者の称号を与えられたマリオ・ベルナルディは、楽団の基礎を確立した人物として高く評価されています。その後も、ガブリエル・フムーラ、古楽演奏の権威として知られるトレヴァー・ピノック、そして世界的なヴァイオリニストとしても活躍するピンカス・ズーカーマンといった、国際的に著名な指揮者たちが音楽監督として楽団を牽引してきました。

2015年からは、イギリス出身の若き才能、アレクサンダー・シェリーが音楽監督に就任しています。シェリーのリーダーシップの下、楽団は新たなレパートリーの開拓や、現代的なアプローチによる演奏活動に意欲的に取り組んでいます。

主なレコーディング

NACOは、数多くのレコーディングを通じて、その演奏を世界に向けて発信しています。マリオ・ベルナルディ指揮によるベートーヴェンやモーツァルトの交響曲全集は、楽団の初期における重要な録音として知られ、その後の評価の礎となりました。また、ピンカス・ズーカーマン指揮による録音も特筆すべきもので、シューベルトの交響曲シリーズや、ハイドンのヴァイオリン協奏曲集、そしてモーツァルトの協奏曲や交響曲を含む多様な作品集などが国際的に高い評価を得ています。これらの録音は、楽団の演奏の質とレパートリーの幅広さを示す貴重な記録となっています。

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