国郡里制

国郡里制：古代日本の地方行政組織

国郡里制とは、701年（大宝元年）に制定された大宝律令によって確立された、古代日本の地方行政制度です。全国を国・郡・里の三段階の行政組織に分割し、効率的な統治を目指した画期的な制度でした。本稿では、国郡里制の仕組み、各組織の役割、そしてその歴史的背景について詳しく解説します。

地方行政組織の構築

天武天皇の時代から地方行政の整備が進められ、戸籍制度に基づく編戸制（へんこせい）が確立されました。これは、成年男子を単位とした戸籍で、軍役の動員にも用いられました。この編戸制を基礎に、全国は畿内（大和、摂津、河内、山城）と七道（東海、東山、北陸、山陰、山陽、南海、西海）に分けられ、さらに66の国、壱岐島、対馬島が設置されました。東国・坂東、陸奥・出羽といった地域区分もありました。

これらの地方行政組織は、中央政府である太政官の管轄下に置かれ、国・郡・里の各レベルに官吏が配置されました。国には国司、郡には郡司、里には里長が任命され、それぞれが地方行政を担いました。715年（霊亀元年）には、里は郷に改められ、郷は2、3の里に分かれることになります。

国と国司

国は、地方行政の中核をなす大きな行政区画でした。国司は、中央政府から派遣され、国内の支配、租税徴収、軍事的防衛などを担いました。国司には、守（かみ）、介（すけ）、掾（じょう）、目（さかん）、史生（しせい）などの官職が置かれ、それぞれの職務分担のもと、行政を進めていきました。後に、地元出身の書記官である国書生や、地方教育機関である国学も設置されるようになり、地方行政の充実が図られました。国には大、上、中、下の四等級があり、職員の配置などに違いがありましたが、その基準は明確にはされていません。

軍団

国には軍団が設置され、国司がその指揮を執りました。軍団は、兵士千人で構成され、大毅、少毅、隊正、旅帥、校尉といった階級があり、組織的な軍隊として機能していました。しかし、実際には千人に満たない軍団も多く存在したとされています。軍団の幹部である大毅や少毅は、在地の有力者から任命されることも多く、中央政府と地方勢力の連携が見られます。

郡と郡司

郡は、国の下に置かれた中規模の行政区画です。郡司は、大領、少領、主政、主帳といった官職から構成され、郡内の行政を執り行いました。大領と少領を合わせて郡領といい、在地の有力者、例えばかつての国造一族などが任命されることがありました。郡は、その規模によって五等級に区分され、地域によって組織の規模に違いがありました。郡の制度は、大宝令以前は「評」と呼ばれ、その名称は現代まで受け継がれています。

郷里と郷長・里長

里は、五十戸を単位とする最小の行政区画でした。里長は、里の行政を担う末端の官吏です。717年（霊亀3年）には、里は郷と改称され、郷長が郷を統率するようになりました。郷は、2～3の里をまとめたものでした。740年頃には、里は廃止され、郷制に移行しました。

国郡里制と中央政府

国郡里制は、単なる地方行政制度にとどまらず、中央政府と地方を結ぶ重要な役割を果たしました。中央政府は、国司を通じて地方行政を監督し、租税を徴収しました。また、国と郡を結ぶ幹線道路や関、駅などの整備も進められ、効率的な情報伝達や物資輸送が確保されました。国郡里制は、古代日本の統一国家形成に大きな役割を果たした制度であったと言えるでしょう。

まとめ

国郡里制は、古代日本の地方行政の基礎を築いた重要な制度です。この制度を通して、中央政府は地方を効率的に統治し、租税を徴収し、軍事力を維持することができました。国郡里制は、単なる行政組織の枠組みを超え、古代日本の政治・経済・社会構造を理解する上で欠かせない要素です。 今後の研究によって、さらに詳細な情報が明らかになることが期待されます。

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