郷

郷についての詳細

郷（ごう、きょう、さと）は、田舎または里を意味する用語であり、日本の地方行政の基本単位の一つとされています。日本においては、特に律令制の時代から、郷は地方行政の最下位の単位として存在してきました。以下では、日本と中国における郷の役割や歴史について詳しく述べます。

日本における郷

律令制の郷

日本の奈良時代において、郷は律令制の下で郡の下部に位置する行政単位として設けられました。最初は「里」と呼ばれ、50戸を一つの単位とし、里ごとに里長が存在しました。しかし715年には、里が郷に改称され、郷の下に新たに設けられた2〜3の里を配置する郷里制に変更されます。この頃から郷は地方行政の最下位単位としての役割を担い、その構成が家族集団である戸に基づいて設計されました。

平安時代には、辞書『和名抄』において、律令制のもとで国・郡・郷の名称が網羅されており、例えば平安京が置かれた山城国には12の郷が存在したことが記録されています。

郷の変質

律令政治の緩やかな変化は地方政治にも影響を及ぼし、郷の位置づけに変化が生じました。有力な郷が郡から独立し、郡そのものを分割する動きが見られました。この変化により、中世には郷は郡と同等の役割を果たすようになり、郷司と呼ばれる新たな行政責任者が登場しました。これは11世紀頃のことで、旧来の郡長は次第に姿を消しました。中世、近世に入ると郷の下に村が形成され、郷村制が成立しました。このような変化の中で、特定の村が「○○郷」として呼ばれることがあり、合掌造りで知られる白川郷はその一例です。

鹿児島県・宮崎県の郷

近世の薩摩藩領では、外城制に基づく管轄区域として郷が用いられました。仙台藩の領域内では、すでに存在していた郷が明治時代の町村制施行に伴い多くの町村に引き継がれました。一部の大規模な郷は上・中・下に分割され、より細分化されました。

長崎県の郷

長崎県の大[[村藩]]領や福江藩領では、市町村下の地域区画として「○○郷」が現在も用いられていますが、近年では「町」としての名称変更が見られ、特に長崎市や佐世保市では「郷」の文字が削除されるなどの動きが見られます。

中国における郷

中国においても郷（簡体字：乡、繁体字：鄉）は古代から存在し、現在も重要な行政機能を担っています。秦・漢時代以来、その位置は変わらず、現代の中華人民共和国でも行政区画の一つとして位置づけられています。

中華人民共和国における郷

中華人民共和国では、郷は三級行政区画制度での三番目のレベルとして位置づけられており、県を構成する主要な形式の一つです。郷の下には村などの下位区分があり、その行政区画は時代による改革を経て変化しています。

中華民国における郷

中華民国では、郷は地方行政の下部組織とされており、県轄市や鎮に準じるものとされています。1999年に公布された地方制度法に基づき現在の形が整備されていますが、旧来の「支庁」や「巡検」に基づく地域区分が今も影響を与えています。

結論

郷という概念は、日本と中国の地域社会において重要な役割を果たしてきました。それぞれの国における郷の発展は歴史的背景や政治的要因によって大きく異なりますが、共通して地域コミュニティを形成する基本的な単位であることは間違いありません。

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