国鉄トラ1形貨車

国鉄トラ1形貨車について

国鉄トラ1形貨車は、日本における無蓋貨車の中でも特に重要な位置を占めていました。この貨車は、1927年に導入され、日本初の17トン積みの二軸車両として設計されました。製造は汽車製造、日本車輌製造、川崎造船所、新潟鐵工所、九州車輌の協力によって1,000両が完成しました。

仕様と改編

ト35000形として登録された貨車は、1928年の車両形式称号規程の改正により、トラ1形に改編され、すべての車両はトラ1からトラ1000まで再番号されました。その後も増備は続き、1931年までにさらに2,400両が製造されました。これらの貨車は、戦争によって買収された鶴見臨港鉄道と南海鉄道からも追加で編入され、最終的には3,429両が在籍したことになります。

これらの貨車は、従来の無蓋貨車における設計上の欠点を克服するために開発されました。特に、木材や長尺物の運搬に対応できるように設計された点が特徴です。実際には、荷台に長さ2間の物を直列に2個積むことができ、内法の寸法も十分に確保されていました。

走行性能と使用状況

トラ1形の全長は8,930 mmで、走行装置は一段リンク式が採用されています。最高運転速度は65 km/hに設定されていました。戦後、1948年の時点では3,205両が残存していましたが、経年劣化が進む中で、1968年に高速化不適格車として識別され、残存車はわずか2両にまで減少。1969年には形式消滅を迎えました。

改造車と譲渡

トラ1形からは、いくつかの改造車両も生まれました。ウ500形やチ1000形、さらにはセラ1形など、多くの変種が存在しました。さらに、国鉄トラ1形貨車は、他の鉄道事業者に譲渡されることも多く、1948年には高松琴平電気鉄道へ譲渡されたり、名古屋鉄道や三井芦別鉄道にも移籍しました。これらの車両は改造され、新たな仕様で運用されることがありました。

同形車の存在

鶴見臨港鉄道のトラ1001形や阪和電気鉄道のトラ900形もトラ1形と同形の貨車として製造され、戦時中に国有化されました。これらも国鉄トラ1形の影響を受けた重要な貨車と言えます。

結論

国鉄トラ1形貨車は、1920年代後半から1960年代にかけて日本の貨物輸送を支えた重要な役割を果たしてきました。その設計思想や運用実績は、今も多くの鉄道ファンや研究者にとって関心の的であり、戦後の鉄道貨物輸送の歴史を語る上で欠かせない存在であったと言えるでしょう。

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