国鉄3005形蒸気機関車

3005形蒸気機関車：樺太から来た異端の力持ち

3005形蒸気機関車は、その出自から運用、そして終焉まで、数奇な運命を辿った機関車です。元々は樺太庁鉄道がアメリカン・ロコモティブ社から輸入したもので、日本の鉄道史において特異な存在感を放っています。

誕生と樺太での活躍

1912年（大正元年）9月、樺太庁鉄道は、線路の幅を広げる工事のために、アメリカン・ロコモティブのクック工場で製造された1両の蒸気機関車を輸入しました。これが3005形のルーツです。車軸配置は2-6-2(1C1)で、2つのシリンダーを持つ単式の飽和式蒸気機関車でした。最大の特徴は、ボイラーの上に水槽を鞍（くら）のように載せたサドルタンク機であったことで、日本のサドルタンク機としては最大級の大きさを誇りました。

当初、運転室は側面に大きな開口部がありましたが、酷寒地である樺太での使用を考慮し、開口部を減らしてガラス戸と扉が設けられました。厳しい環境下での運用に耐えうるように設計されたことが伺えます。

導入当初は予算の関係で、輸入代理店の三井物産が所有していましたが、1914年（大正3年）4月1日に正式に樺太庁鉄道の所有となりました。形式番号は「1形（1）」と称し、樺太庁鉄道の主力機関車として活躍しました。

国鉄への編入とその後

1943年（昭和18年）に南樺太が日本国内に編入されたことに伴い、樺太庁鉄道は鉄道省に移管されました。それに伴い、本形式も3005形（3005）に改称されました。

この機関車は、主に樺太東線の延伸工事に従事し、北真岡や施設部敷香派出所に配置されていました。しかし、1945年（昭和20年）のソ連軍による樺太占領により接収され、その後の消息は不明となっています。

主要諸元

3005形の主要な仕様は以下の通りです。

全長：8,636mm
全高：3,231mm
全幅：2,133mm
軌間：1,067mm
車軸配置：2-6-2(1C1)
動輪直径：914mm
シリンダー（直径×行程）：330mm×457mm
ボイラー圧力：11.6kg/cm2
火格子面積：1.2m2
全伝熱面積：51.4m2
水タンク容量：4.4m3
燃料積載量：0.63t
シリンダ引張力：5,370kg

まとめ

3005形は、樺太庁鉄道という特殊な環境下で生まれ、日本の鉄道史に名を刻んだ蒸気機関車です。その生涯は、樺太の歴史とともにあり、ソ連軍に接収された後は消息を絶ってしまいましたが、その存在は今もなお、鉄道ファンや歴史愛好家の間で語り継がれています。

参考文献

臼井茂信「日本蒸気機関車形式図集成」1969年、誠文堂新光社刊
臼井茂信「機関車の系譜図 2」1972年、交友社刊
金田茂裕「形式別 国鉄の蒸気機関車 II」1984年、プレス・アイゼンバーン刊
* 川上幸義「樺太の機関車」鉄道ピクトリアル1966年8月号 No.187

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