国鉄5700形蒸気機関車

5700形蒸気機関車

5700形は、かつて日本国有鉄道の前身である鉄道院に所属したテンダ式蒸気機関車です。アメリカのスケネクタディ社で製造され、日本に初めて導入されたスケネクタディ社製の蒸気機関車として知られています。

概要

本形式は、旅客列車を牽引するために設計された車軸配置4-4-0(2B)の単式2気筒、飽和式機関車です。鉄道作業局（官設鉄道）、九州鉄道、北海道炭礦鉄道によって、合計59両が導入されました。

本形式の大きな特徴として、発注元によって形態がわずかに異なっていた点が挙げられます。主な違いは、ワゴントップ型ボイラーの上辺形状や、クロスヘッド滑り棒の形状と本数にありました。例えば、鉄道作業局の車両はボイラーの傾斜部分が急で、滑り棒は1本でしたが、九州鉄道の車両はボイラーの傾斜が緩く、滑り棒は4本でした。北海道炭礦鉄道の車両は、ボイラー形状は九州鉄道と同様の緩いタイプでしたが、滑り棒は4本でした。また、炭水車の台車も3軸固定式と片ボギー式の2種類が存在しました。

1906年（明治39年）に制定された鉄道国有法により、これら全ての車両が国有鉄道籍となり、1909年（明治42年）に制定された鉄道院の車両形式称号規程において、58両が5700形となりました。1両不足しているのは、日露戦争時に陸軍に徴発された車両が未帰還となったためです。

各鉄道会社における運用

鉄道作業局

1897年（明治30年）に10両（製造番号4613 - 4622）が導入されました。当初はAO形、後にD10形と呼ばれ、車両番号は242 - 251でした。東海道線中部で使用されていましたが、1904年（明治37年）から1905年（明治38年）にかけて陸軍に供出され、満州に設立された陸軍野戦提理部で使用されました。このうち242号機は、満州で使用中に大破し廃車となったため、1909年の改番では9両が5700 - 5708に改められました。その後は、水戸周辺や奥羽線の米沢・横手間に転じ、最終的には北海道に渡りました。

九州鉄道

1897年から3年間にわたり、合計36両が導入されました。

1897年（12両）：55 - 66（製造番号4572 - 4583）
1898年（12両）：116 - 127（製造番号4764 - 4775）
1899年（12両）：142 - 153（製造番号5025 - 5036）

九州鉄道では、1897年製の12両を55形、1898年および1899年製の24両を116形と称しましたが、これは炭水車の台車の違い（3軸固定式か片ボギー式か）によるものです。1909年の改番では、5700形（5709 - 5744）となりました。これらの車両は、最後まで九州を離れることはありませんでした。

北海道炭礦鉄道

1901年および1906年に計13両を導入しました。1906年製の車両は、アメリカン・ロコモティブ社に統合された後の製造です。

1901年（8両）：55 - 57, 63 - 67（製造番号5773 - 5775, 6123 - 6127）
1906年（5両）：71 - 75 → 76 - 78, 74, 75（製造番号40407 - 40411）

1901年製の8両はL形、後にヌ形と称し、1906年製の5両はヨ形と称しました。形式が分かれた理由は、九州鉄道と同様に炭水車の台車の違いによります。1906年製の車両は、当初71 - 75の番号が予定されていましたが、実際には74 - 78となりました。1909年の改番では、5700形（5745 - 5757）に改められました。これらの車両も北海道を離れることなく、旧鉄道作業局の9両とともに室蘭線などで使用されました。

1905年には、ボールドウィン社において同仕様機（後の鉄道院5800形）が3両（68 - 70）製造されています。これは、1901年製のヌ形の仕様でボールドウィン社に発注されたものですが、蒸気ドームの形状や炭水車の台車構造が異なっていたためヨ形と称されました。1906年製の5両は、このヨ形の仕様をもってアメリカン・ロコモティブ社に発注されたものと考えられます。

廃車と譲渡

1928年から北海道の車両から廃車が始まり、1931年、1933年、1934年に大部分が廃車となり、1936年をもって鉄道省から形式消滅となりました。これらのうち8両は払い下げられましたが、樺太庁鉄道に移管された2両については、1943年に実施された南樺太の内地化により鉄道省に編入されました。しかし、太平洋戦争敗戦後の状況は不明です。また、5750号機の炭水車が1931年に夕張鉄道に払い下げられ、水運車として使用されました。

主な譲渡先

5704（1931年） → 北海道拓殖鉄道 → 山門炭鉱（1940年譲渡） → 三池鉱山（貸渡） → 熊延鉄道（貸渡） → 廃車
5735（1933年） → 三好礦業（日本炭礦）
5736（1934年） → 日本礦業（日本炭礦）
5737（1932年） → 三好礦業（日本炭礦）
5738（1933年） → 三好礦業（日本炭礦）
5743（1938年） → 日産化学工業（日本炭礦） → 1954年廃車
5756（1932年） → 樺太庁鉄道 → 鉄道省（1943年）
5757（1932年） → 樺太庁鉄道 → 鉄道省（1943年）

主要諸元

5700 - 5708号機の諸元

全長：14,643mm
全高：3,671mm
軌間：1,067mm
車軸配置：4-4-0(2B)
動輪直径：1372mm
弁装置：スチーブンソン式アメリカ形
シリンダー（直径×行程）：406mm×610mm
ボイラー圧力：11.2kg/cm2
火格子面積：1.49m2
全伝熱面積：99.7m2
煙管蒸発伝熱面積：90.9m2
火室蒸発伝熱面積：8.9m2
ボイラー水容量：4.0m3
小煙管（直径×長サ×数）：45mm×3,318mm×196本
機関車運転整備重量：41.06t
機関車空車重量：34.21t
機関車動輪上重量（運転整備時）：25.86t
機関車動輪軸重（最大・第1動輪上）：13.53t
炭水車運転整備重量：24.90t
炭水車空車重量：11.87t
水タンク容量：9.6m3
燃料積載量：3.05t
シリンダ引張力：6,980kg
* ブレーキ装置：手ブレーキ、真空ブレーキ／蒸気ブレーキ（旧九州鉄道）／空気ブレーキ（旧北海道炭礦鉄道）

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