国鉄5830形蒸気機関車

5830形蒸気機関車の概要

5830形は、日本国有鉄道の前身である鉄道院・鉄道省に在籍していたテンダ式蒸気機関車です。この機関車は、1898年に日本鉄道によってイギリスのダブス社から輸入されたもので、その製造番号は3657および3658です。車軸配置は4-4-0（2B）で、当時としては非常に特徴的な設計を持ち合わせていました。

特徴的な設計

この5830形は、国内での利用を考慮して独自の構造を持ち、特に常磐炭田産の低質炭を燃料として利用するために、ウッテン式に近い広火室と燃焼室が採用されています。これにより、ボイラーの伝熱面積と火格子面積の比が非常に小さく設定されていました。また、火室を避けるために、第1・第2動輪の間隔は、他形式の機関車に比べて延長されています。

車両のスペック

性能面でも目を引く特徴があります。炭水車は、当時のイギリス製機関車としては珍しいダブルボギーの4軸形で、大量の石炭と水を積載可能です。石炭の積載量は5.5トン、水の積載量は13.6立方メートルと、非常に大きく設定されています。これは、低質炭を燃料とすることから燃費が悪く、たくさんの燃料を積載する必要があったためです。

国有化と改造

1915年には日本政府により国有化され、盛岡工場での改造が行われました。この改造により、火室の奥行きと幅が縮小され、燃焼室も撤去されました。さらに、シリンダ径も小さくし、蒸気圧力を上げることで性能向上を図りました。その結果、この機関車は新たに良質な瀝青炭が燃料として普及する中で、経済性の面で劣る機関車と見なされるようになりました。

廃車とその後

1922年には2両とも使用されなくなり、廃車解体されました。配置場所は原ノ町と一貫しており、その短期間の間で数々の改造が施されたにもかかわらず、長くは運用されることがありませんでした。

主要諸元

• - 全長: 16.267m
• - 全高: 3.734m
• - 全幅: 2.413m
• - 車軸配置: 4-4-0(2B)
• - 動輪直径: 1.372m
• - 弁装置: スチーブンソン式
• - シリンダー: 432mm×584mm → 406mm×584mm
• - ボイラー圧力: 11.2kg/cm2 → 12.7kg/cm2
• - 火格子面積: 2.42m2 → 1.57m2
• - 伝熱面積: 88.1m2 → 94.6m2

機関車性能

• - シリンダ引張力: 7,560kg → 7,440kg
• - ブレーキ装置: 手ブレーキ、真空ブレーキ

5830形は、短命で終わったものの、日本の蒸気機関車史において特異な存在でした。その設計は、当時の技術水準や運用要件を反映しており、蒸気機関車の進化に寄与した一要素となっています。

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