国鉄90形蒸気機関車

90形タンク式蒸気機関車について

90形タンク式蒸気機関車はかつて日本国有鉄道（国鉄）に所属していた特異な存在です。この機関車は、南武鉄道（現在の南武線）の3形（3）を源流としており、1944年に戦時中の買収によって国有化される際に、仮番号122が付与され、その後90形（90）と改名されました。国鉄へと移行したその背景には、当時の交通網の変化や国の政策が大きく影響しています。

90形機関車の製造は1922年にさかのぼり、雨宮製作所が温泉軽便鉄道（後の雲仙鉄道）向けに一両を手掛けました。この機関車は、車軸配置が2-4-0（1B）の27トン級のタンク機関車であり、動輪の直径は914mmと比較的小ぶりであったため、上まわりに対してやや貧弱な印象を与えました。ボイラーはランボードの上に位置しており、台枠は一枚板のため、構造的にとてもシンプルですが、その分、独特の美しさを醸し出しています。

温泉軽便鉄道では「1」という番号で呼ばれていましたが、雲仙鉄道に統合された際には23という新しい番号が与えられました。1937年に南武鉄道に移籍し、国有化後の1949年3月には運行を終了し、廃車となりました。これにより、90形はその歴史に幕を下ろし、数少ない日本の蒸気機関車の一つとして記憶されています。

雨宮製作所はその後、同じ系統の機関車を1921年から1922年にかけて4両製造しました。残りの3両は主に他の鉄道会社に供給され、島原鉄道の26号、および別府軽便鉄道の1号、2号がそれに該当します。廃車された時期は、島原鉄道26が1955年、別府鉄道の1号と2号は1964年にそれぞれ運行を終えました。

主要諸元

90形の主要な仕様については以下の通りです：

• - 全長: 8,163mm
• - 全高: 3,658mm
• - 全幅: 2,616mm
• - 軌間: 1,067mm
• - 車軸配置: 2-4-0(1B)
• - 動輪直径: 914mm
• - 弁装置: ワルシャート式
• - シリンダー（直径×行程）: 330mm×457mm
• - ボイラー圧力: 11.0kg/cm²
• - 火格子面積: 0.84m²
• - 全伝熱面積: 42.3m²
• - 煙管蒸発伝熱面積: 38.1m²
• - 火室蒸発伝熱面積: 4.1m²
• - 機関車運転整備重量: 27.00t
• - 機関車空車重量: 22.35t
• - 機関車動輪上重量（運転整備時）: 19.4t

性能の面では、シリンダ引張力が5,090kgであり、シンプルながら一定の性能を持っていました。ブレーキシステムとしては手ブレーキと蒸気ブレーキが搭載されていました。

結論

90形タンク式蒸気機関車は、日本の鉄道史において貴重な存在であり、国有化や戦時中の動向を反映した一例として、鉄道ファンや歴史愛好者にとって、興味深い対象となっています。現在ではその姿を見ることができないため、文献を通じてその実態に触れることが重要です。

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