蒸気ブレーキ

蒸気ブレーキ

蒸気ブレーキは、鉄道車両、特に蒸気機関車で使用されていたブレーキシステムの一種です。蒸気機関車が動力源として生成する蒸気の一部を制動に利用する仕組みで、加圧された蒸気をブレーキシリンダーに送り込むことで車輪に制動力を加えます。

概要

蒸気ブレーキの制動原理は、空気ブレーキ、特に直通ブレーキと類似していますが、圧縮空気を使用しない点が異なります。そのため、通常は空気ブレーキの範疇には含まれません。蒸気ブレーキは、空気圧縮機（エアーコンプレッサー）を必要としないため構造が比較的簡単です。しかし、蒸気圧が一定レベルに達していないと使用できないという制約があり、編成全体に作用する貫通ブレーキとしての使用には適していません。そのため、主に機関車自体の制動を目的とした単独ブレーキとして用いられました。

歴史

蒸気ブレーキは、1833年にジョージ・スチーブンソンによって発明されました。これは鉄道ブレーキとして初めて動力を用いたブレーキシステムでした。しかし、初期の蒸気ブレーキは制動圧の調整が難しく、車輪をロックさせてしまうことが頻繁にあり、現場での評判は芳しくありませんでした。その後、技術の進歩とともに徐々に改良が加えられましたが、列車の編成が長くなるにつれて貫通ブレーキの必要性が高まりました。真空ブレーキや空気ブレーキといった、編成全体に効果を発揮するブレーキシステムが開発されると、蒸気ブレーキは次第に衰退していきました。しかし、構造が簡単であるため、貫通ブレーキの普及が遅れた軽便鉄道の蒸気機関車では、その後も使用される例が見られました。日本国有鉄道（国鉄）では、戦時設計のB20形蒸気機関車において、構内での入換作業や小運転に用途を限定することで構造の簡素化を図り、ブレーキシステムとして蒸気圧を利用した単独ブレーキのみを搭載していました。

鉄道模型における蒸気ブレーキ

実際に蒸気圧を使用して走行する鉄道模型、いわゆるライブスチームの世界でも、軌間89mmや127mmなど、人が乗って運転できる大型のモデルには、蒸気ブレーキが搭載された製品が存在します。これにより、よりリアルな運転体験を再現することが可能です。

参考文献

* 齋藤 晃『蒸気機関車の興亡』（初版）NTT出版、1996年。ISBN 4-87188-416-3

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