国鉄A3形蒸気機関車

A3形蒸気機関車

A3形は、日本の鉄道草創期に活躍した蒸気機関車です。1872年（明治5年）に日本初の鉄道開業に合わせてイギリスから輸入された10両の蒸気機関車のうちの1形式で、エイボンサイド・エンジンによって2両が製造されました。

本形式は、1909年（明治43年）の形式称号規程制定以前に除籍され台湾総督府鉄道部に譲渡されたため、数字のみの形式称号は与えられていません。

構造

A3形の動輪直径は1,219mm、車軸配置は2-4-0(1B)で、2気筒単式の飽和式タンク機関車です。弁装置はロッキングアームを持つスチーブンソン式、安全弁はサルター式でしたが、後にラムスボトム式に改造されました。

運転台には前部と側面に風除けが設けられ、後部は開放式でした。特徴的なのは、運転台から独立して後部に設けられた炭庫です。後に運転台後部にも風除けが追加されました。

主要諸元

全長：7,912mm
全高：3,607mm
軌間：1,067mm
車軸配置：2-4-0(1B)
動輪直径：1,219mm
弁装置：スチーブンソン式アメリカ型
シリンダー（直径×行程）：305mm×457mm
ボイラー圧力：8.4kg/cm2
火格子面積：0.91m2
全伝熱面積：49.3m2
機関車運転整備重量：24.59t
機関車動輪上重量（運転整備時）：18.49t
機関車動輪軸重（第1動輪上）：9.96t
水タンク容量：2.73m3
燃料積載量：0.75t
シリンダ引張力：2,490kg

運転・経歴

1872年に日本に到着した2両は、「6, 7」と付番され、京浜間で運用されました。1876年の改番で「6」は「5」に改番されています。

1885年頃には日本鉄道に貸し渡され、東海道線の工事に使用されました。工事完了後は京浜間に戻り、保線・工事用として活躍しました。

1894年には「C形」、1898年には「A3形」に類別されています。1895年から1897年頃には、煙突の太さを変更、運転台の風除け窓を丸型に変更、後部にも風除けを設置、安全弁をラムズボトム式に改造する工事が実施されました。

1900年から1901年にかけて2両とも除籍され、台湾総督府鉄道に譲渡されましたが、「5」は輸送途中の海難事故で失われました。

台湾に到着した「7」は、「A2-4-0T形」に改められ、高雄 - 台南間で運用されました。1906年には「9」に改称、後年E9形に改められ、1925年に廃車となりました。

保存

1926年の使用停止後、日本最古の機関車として、台湾の1号機関車とともに国立台湾博物館に保存されることになりました。現在は台北の二二八和平公園内にガラス張りの専用保存館で保存され、その姿を見ることができます。

参考文献

臼井茂信「日本蒸気機関車形式図集成」1969年、誠文堂新光社刊
臼井茂信「機関車の系譜図 1」1972年、交友社刊
金田茂裕「日本最初の機関車群」1990年、機関車史研究会刊
金田茂裕「日本蒸気機関車史 官設鉄道編」1972年、交友社刊
川上幸義「私の蒸気機関車史　上」1978年、交友社刊
高田隆雄監修「万有ガイドシリーズ12　蒸気機関車 日本編」1981年、小学館刊

外部リンク

二二八和平公園内SL展示室（旅々台北.com内）

関連項目

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