国鉄ED41形電気機関車

ED41形電気機関車：碓氷峠を駆け抜けたアプト式機関車の先駆け

ED41形は、1926年（大正15年）に当時の鉄道省が輸入した、アプト式と呼ばれる特殊な機構を備えた直流電気機関車です。信越本線の横川〜軽井沢間、通称「碓氷峠」の急勾配区間で使用するため、スイスのブラウン・ボベリ社とスイス・ロコモティブ・アンド・マシン・ワークスによって2両が製造されました。この機関車は、アプト式電気機関車の出力増強を目指した試作機としての役割を担い、その後のED42形量産へと繋がる重要なモデルとなりました。

製造当初は10040形という形式でしたが、1928年（昭和3年）の車両形式称号規程改正により、ED41形（ED411、ED412）に改称されました。車体は箱型で、前位側の運転室前面は3面折妻、後位側は切妻という特徴的な形状をしています。前位側にはデッキが設けられ、屋根上にはパンタグラフと空気タンクが設置されています。

ED41形の大きな特徴は、アプト式鉄道に対応した機構です。通常の車輪による走行に加え、ラックレールと噛み合う歯車（ピニオン）を用いることで、急勾配での安定した走行を可能にしています。本線上では第三軌条から集電し、急勾配区間ではラックレールを使用します。運転台は横川寄りの片側にのみ設置されており、片運転台型となっています。

動力機構は、1時間定格200kWの電動機3基で構成されています。動輪駆動用に2基、ラックレール駆動用に1基が搭載され、ラック台車は車体中央部に配置されています。走行用台車はボギー式で、各台車に1基ずつ電動機が装備されています。ED40形ではピニオン引張力と粘着引張力の比が1:1でしたが、ED41形では1:2とし、粘着力を最大限に利用することでピニオンやラックレールの摩耗を抑制しています。さらに、ピニオン駆動用電動機軸には摩擦継手を設け、過電流やピニオン破損を防ぐ安全対策も施されています。

ED41形は一貫して横川機関区に配置され、碓氷峠区間で活躍しましたが、老朽化のため1951年（昭和26年）に2両とも廃車解体されました。残念ながら、現存する保存機はありません。

主要諸元

全長: 12,800 mm
全幅: 2,950 mm（集電靴を含めた全幅）
全高: 3,885 mm
運転整備重量: 59.85 t
電気方式: 直流600 V （第三軌条方式、架空電車線方式併用）
軸配置: B-b-B
台車形式: -
主電動機: MT21形 × 3基
歯車比（動輪）: 19:94 (1:4.95)
歯車比（歯輪）: 59:109 × 28:56 (1:3.70)
1時間定格出力: 525 kW
1時間定格引張力: 11,800 kg (14,600 kg)
動力伝達方式: 歯車1段減速、連結棒式（歯車2段減速式）
制御方式: 非重連、抵抗制御、2段組み合わせ制御、弱め界磁制御
制御装置: 電動カム軸接触器、電磁空気カム軸接触器併用
ブレーキ方式: EL14B空気ブレーキ、電気ブレーキ、手用動輪用ブレーキ、手用ラック歯車用帯ブレーキ、空気式ラック電動機用帯ブレーキ

関連項目

国鉄3900形蒸気機関車
アンデス横断鉄道E-100形電気機関車

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