国鉄TR10形台車

国鉄TR10形台車について

国鉄TR10形台車は、日本の鉄道院が開発した鉄道車両用の１つの形式です。この台車は、日本の鉄道史において重要な役割を果たし、様々な車両に採用されました。その背景には、1907年に施行された鉄道国有法による大私鉄の国有化がありました。この国有化を受けて、鉄道院は新たな車両製造のための規格統一を求められ、これに基づき様々な検討が行われました。

開発の経緯

鉄道院は、1910年に今後の輸送計画や建設計画の基準となる基本形客車の設計を完成させました。初期の台車としては、1909年に新橋工場で設計された明治42年式の4輪ボギー台車が採用されました。この台車は、国有化前からの実績を拡大したものであり、しかし輸入品が多く、高価であるという欠点がありました。そこで、1911年には明治44年式4輪ボギー台車が改良され、国産の部材に切り替えられました。さらに1912年には、明治45年式4輪ボギー台車が設計され、国産品の使用が進みました。

1912年には、電車用としてもこの系統の台車が採用され始めました。この頃、鉄道院は台車の形式称号の整理を進め、1929年にはTR10という名称が与えられました。TR10は、電車用と客車用を区別することなく、全ての初期の制式台車に対して与えられた名称となりました。

構造の特徴

TR10形は、鍛造の釣り合い梁を特徴とし、側梁から吊り下げられた揺れ枕吊りを備えています。この構造は、釣り合い梁が双方の車輪にかかる荷重を均等に分配することを目的としており、軌道条件が劣悪な地域での使用に適しています。このため、TR10形はアメリカやフランスの鉄道でも広く採用され、日本でも特に山陽鉄道の優等列車の高速運転に利用されました。

釣り合い梁はともに個別に動揺し、この特性によって車輪の浮き上がりを抑制し、安定した走行を実現しています。TR10形は、国産部材の多くを使用しながらも、高い耐荷重性能を発揮しました。また、釣り合い梁や側梁に鋼材が使われており、これにより構造の強度が向上しています。特に、球山形鋼を使用することによって、強度不足の問題を解消し、高強度を実現しています。

仕様と派生形式

TR10形は、2軸付随台車として設計されています。具体的な仕様としては、車体支持機構が揺れ枕吊り式で、3点支持がなされ、枕ばねは3列重ね板ばねが使われています。台車枠はリベット組立から構成されており、軸ばねはコイルばねです。

この台車は国鉄向けに多くの派生形式が設計され、TR11やTR12、TR13など、多数のグループに広がっていきました。特にTR11はグループの代表的な形式であり、22000系やオハ31系などの客車に広く採用されました。また、電車用のTR14は、TR11を基に設計変更が施され、当時の大型電動機にも対応しています。

運用と評価

TR10形は、戦後も多くの車両に使用され続けましたが、急行や特急列車の運用においては、乗り心地の悪さから不評を買うこともありました。特に高速運転時には、摩耗の進行などの問題が指摘されることがありました。しかし、歴史的に見ると、TR10形は日本の鉄道発展に寄与し、多くの派生形とともに台車の設計において重要な役割を果たしました。

まとめ

国鉄TR10形台車は、日本の鉄道史における一つの象徴であり、様々な改良と派生を経て、多くの鉄道路線で利用されました。その設計は後の台車設計にも影響を与え、さらなる発展を遂げていくこととなります。

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