国際レズビアン・ゲイ協会

国際レズビアン・ゲイ協会（International Lesbian, Gay, Bisexual, Trans and Intersex Association、略称ILGA）は、LGBTQI+（レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア、インターセックスなど）の人々の権利擁護を目的として活動する国際的な非政府組織（NGO）です。

この協会には、世界各地の600を超えるLGBTQI+関連団体が加盟しており、人権や市民権の分野における彼らの権利実現のために、様々なキャンペーンを展開しています。また、国連や各国政府への働きかけ、嘆願書提出のための署名運動なども積極的に実施しており、2009年時点では世界約110カ国で活動が展開されています。

ILGAは、地理的な区分に基づいていくつかの地域支部で構成されています。

ILGA-Africa（アフリカ地区）
ILGA-Asia（アジア地区）
ILGA-ANZAPI（オーストラリア・ニュージーランド/アオテアロア・太平洋諸島地区）
ILGA-Europe（欧州地区）
ILGA-North America（北米地区）
ILTGA-LAC（ラテンアメリカ・カリブ海地区、ここでは「トランスジェンダー」が名称に含まれています）

設立の経緯と歴史

ILGAの始まりは、1978年8月8日にイングランドのコヴェントリーで開催された会議に遡ります。当初はInternational Gay Association (IGA)として設立され、14カ国から集まった17団体の代表者30名が参加しました。名称は1986年に現在のILGAに変更されています。

設立初期から、ILGAは国際的な人権団体であるアムネスティ・インターナショナル（AI）に対し、レズビアンやゲイに対する迫害問題を活動対象に加えるよう働きかけを行いました。13年間のキャンペーンを経て、1991年にはAIがLGBTの人権問題を取り扱うようになり、今日の国際的なLGBTQ+権利擁護において重要な役割を果たしています。

また、ILGAは世界保健機関（WHO）の疾病リストから同性愛が除外される過程においても貢献を果たしました。

国連における諮問資格と論争

ILGAは、レズビアン・ゲイの権利団体として初めて国連で非政府組織（NGO）としての諮問資格を獲得しました。これは1993年の出来事ですが、翌1994年にはこの資格が保留される事態に直面します。

資格保留の背景には、一部加盟団体の性質に関する論争がありました。特に、米国少年愛者団体（NAMBLA）の加盟が問題視され、ジェシー・ヘルムズ議員らによるキャンペーンが行われた結果、1994年に国連経済社会理事会（ECOSOC）での諮問資格が保留されました。

これを受け、ILGAは1994年初頭に投票によりNAMBLAを含む3団体を、「ペドフィリアを支持・推進することを主な目的とする団体」として除名処分としました。さらに、NAMBLAとの連帯を表明していたドイツのVSGという団体も、ILGAの規約に沿った対応が決定されるまでメンバーシップを保留とされました（VSGは後にILGAから脱退し、組織自体も消滅しています）。

ILGAは諮問資格の回復を目指し、2000年に再申請を行いましたが、2002年および2003年のECOSOCでの投票で否決されました。これは、ILGA加盟団体のリストが非公開であるため、問題となった団体との関係が完全に断ち切られたか確認できないという懸念が要因とされました。2006年にも再申請が拒否されています。

ILGA側は、これらの申請却下にはエジプトやイスラム諸国会議機構（OIC）の圧力があるとの見方を示していました。

しかし、長年の努力と、ペドフィリア反対の姿勢を明確にし続けた結果、2010年7月19日、ECOSOCはILGAの諮問資格申請を賛成多数（賛成23、反対13、棄権13）で承認しました。これに続き、同年12月にはILGA-Europeも他の団体と共にECOSOCの諮問資格を取得しています。

世界会議

ILGAは定期的に世界会議を開催しており、例えば2008年にはオーストリアのウィーンで、2010年にはモスクワでの開催が予定されていました。

日本での活動

日本におけるILGAの活動は、1984年初頭にIGA（当時）の幹部が日本のゲイ雑誌創刊者に支部設立を打診したことから始まりました。当初はIGA日本として設立され、事務所を構えて活動を開始しました。同年には大阪支部も設立されましたが、後に「OGC（大阪ゲイ・コミュニティ）」として独立しています。

1986年には、ILGA日本から分離・独立した形で「動くゲイとレズビアンの会」（現・アカー）が設立されるなど、ILGA日本の活動は他の日本のLGBTQ+団体の源流の一つとなりました。ILGA日本には青年部門「together」も存在し、そのメンバーが「GLOW」や「AIDSケアプロジェクト」といった団体設立に関与しています。

主な活動として、月例セミナーや機関誌「JOIN」の発行、エイズパニック期には「エイズ110番」を開設するなど、啓発や支援活動を行いました。また、1992年にはILGA日本が運営委員会として関与し、日本初の「東京国際レズビアン・ゲイ・フィルム&ビデオ・フェスティバル」が開催されました。1994年には、ILGA日本が中心となって日本初の「東京レズビアン・ゲイ・パレード」も開催しています。

ILGA日本グループとしては、「動くゲイとレズビアンの会」（アカー）、G-Front関西、北海道セクシュアルマイノリティ協会札幌ミーティングなどが加盟しており、2007年にはゲイジャパンニュースも加盟しました。ゲイジャパンニュースの共同代表を務める山下梓氏は、2013年時点でILGAの共同代表代行も務めていました。

活動拠点であった雑誌の廃刊などもあり、1996年以降はILGA日本自体の目立った活動は少なくなったとされています。

ILGAは国際的なネットワークを通じて、世界各地のLGBTQI+の人々の権利向上と社会における平等を推進するための重要な役割を果たしています。

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