国際連合マリ多元統合安定化ミッション

国際連合マリ多元統合安定化ミッション（MINUSMA）

国際連合マリ多元統合安定化ミッション（United Nations Multidimensional Integrated Stabilization Mission in Mali、略称：MINUSMA）は、かつてマリ共和国に展開していた国際連合平和維持活動（PKO）です。2013年4月25日の国際連合安全保障理事会決議2100号を受けて設立され、2023年6月30日の国際連合安全保障理事会決議2690号を受けて終了しました。

背景と目的

2012年、マリ北部紛争で北部地域がトゥアレグ独立派に制圧され、さらにイスラム原理主義勢力が台頭し、マリ中部地域への侵攻の脅威が高まりました。これに対し、2013年2月にはフランスがセルヴァル作戦として軍事介入を行いました。また、同時期にアフリカ主導マリ国際支援ミッション（AFISMA）も展開されました。

このような状況を受け、国際社会はマリの安定化を支援するため、国際連合の主導によるPKOの設立を決定しました。MINUSMAは、マリ暫定政府からの政権移行ロードマップ遂行の支援を主な目的とし、国内騒擾で混乱したマリ共和国北部の治安回復、人口密集地での通信の回復、民間人保護、人権監視、人道支援、難民帰還、国家権力の回復、包括的かつ民主的な選挙の準備などを任務としました。

ミッションの展開

2013年4月25日に国際連合安全保障理事会決議2100号が採択され、MINUSMAの設立が正式に決定しました。主要な戦闘の停止や武装勢力の脅威度を判断した上で、同年7月1日からミッションは開始されました。MINUSMAは、軍事要員12,200人と警察要員1,440人からなる大規模な組織で、フランス軍やチャド軍の他、アフリカ主導マリ国際支援ミッションの部隊の大半がこれに移行・増強されました。アフリカ主導から国際連合主導に切り替わることにより、財政や後方支援の強化が期待されました。

しかし、MINUSMAの活動は困難を極めました。2018年1月20日には、マリ共和国北部キダル州アゲルホックの駐屯地が武装勢力の襲撃を受け、チャド人隊員10人が死亡、少なくとも25人が負傷する事態が発生しました。AQIM（イスラム・マグレブ諸国のアル＝カーイダ）が犯行声明を出しました。

また、2022年7月には、PKOのためマリ入りしたコートジボワール兵49人がマリ軍政に拘束されるという事件も発生しました。マリ軍政は彼らを「傭兵」と主張し、「マリ政府への攻撃と謀略」の罪で起訴。同年12月30日、マリの裁判所はコートジボワール兵46人に禁錮20年の判決を言い渡しました。2023年1月6日、兵士46人はマリのアシミ・ゴイタ暫定大統領から恩赦を与えられ、7日にコートジボワールに帰国しました。

ミッションの終了

2023年6月16日、マリ軍事政権はMINUSMAを「失敗」と非難し、即時撤収を国連安全保障理事会に要請しました。背景には、軍事政権がロシアの民間軍事会社であるワグネル・グループと関係を深めていることが指摘されています。安全保障理事会は要請を受け、6月30日に会合を開き、活動の終了と年内までの撤収を定めた決議を採択しました。

MINUSMAは、その活動期間中に多くの犠牲者を出し、2023年4月30日時点で部隊の死亡者は304名に達しました。これは、PKOとしては国際連合レバノン暫定駐留軍（UNIFIL）に次いで2番目に多い数です。

関連項目

マリ北部紛争
セルヴァル作戦
アフリカ主導マリ国際支援ミッション
欧州連合マリ訓練ミッション
欧州連合マリ能力構築ミッション
西アフリカ諸国経済共同体監視団

外部リンク

MINUSMA United Nations Multidimensional Integrated Stabilization Mission in Mali（英語）
S/RES/2100(2013) - 国連安保理決議2100号)
* S/RES/2690(2023) - 国連安保理決議2690号)

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