國士無双

『國士無双』について

『國士無双』（こくしむそう、旧字体: 國士無雙）は、1932年に製作・公開された日本の長篇劇映画であり、当時のサイレント映画の一つとして重要な地位を占めています。監督は伊丹万作、原作・脚本は伊勢野重任によるもので、公開された当初からその独特な映画表現には高い評価が寄せられました。特に昭和7年度のキネマ旬報ベストテンでは6位にランクインし、作品のクオリティの高さを示したと言えるでしょう。本作は、コミカルな要素と風刺を交えた「ナンセンス時代劇」として知られ、伊丹万作の代表作の一つに数えられています。

概要

本作は、伊丹万作の監督デビュー作としても位置付けられていますが、伊勢野重任という新人脚本家が手掛けたオリジナル脚本によって成り立っています。片岡千恵蔵が主演を務め、多くの実力派俳優が出演しました。この映画は、近代的な映画技法を融合させており、特にサイレント映画の制約の中で伝えられるストーリーは、観客に対して新しい視覚的体験を提供していました。おおよそ21分間のフィルムしか現存しないため、全貌については謎が多いものの、その一部だけでも作品の魅力は健在です。

あらすじ

物語は、「武士道華やか過ぎしころ」に設定され、贋者が本物の剣豪を名乗ることで起こる騒動を描いています。尾羽内烏之亟（瀬川路三郎）と伊賀左馬亮（渥美秀一郎）という二人の浪人は、権威を借りて豪遊するため、無邪気な青年（片岡千恵蔵）を「伊勢伊勢守」と偽る計画を練ります。しかし、彼らの策略は次第に雪だるま式に膨らみ、さまざまな騒動を引き起こします。本物の伊勢伊勢守（高勢実乗）との対決が避けられない中、緊迫した展開が待っています。

評価

公開当初から高い評価を受けた本作は、映像表現の革新性に加え、風刺に満ちた内容が観客に強く印象づけました。江戸時代の価値観が背景にありながらも、当時の社会や人々を巧みに描写しており、観る者に深い思索を促します。映画批評界でも、伊丹万作は「考える映画作家」と称賛され、彼の作品が持つ影響力は、後続の映画作家にも強い影響を与えました。

発掘・復元

1990年代に入ってから、当時の家庭用フィルムである9.5mm版が発見され、その後復元が進められました。大阪における上映イベントなどで復元版も公開され、映像作品としての再評価がなされる結果となりました。このように、本作は失われた名作として再び脚光を浴び、新たな視点を提供しています。復元版は、現代の技術を駆使して上映され、その魅力を再発見する機会を与えています。

リメイク

本作は数度にわたりリメイクされており、1962年に『あべこべ道中』として初めての映画リメイクが行われ、その後もテレビドラマなどへと展開されました。また、1986年には保坂延彦監督によって『国士無双』として再度映画化され、現代的な視点で新たな解釈が加えられました。リメイク作品は、オリジナルの魅力を継承しつつも、当時の観客の嗜好に応じた形でアプローチしています。

結論

『國士無双』は日本映画史における重要な作品の一つであり、サイレント映画の中で独自の地位を築き上げています。日本の映画界における文化的影響や、その後の映画制作における先駆的役割は、今日においても評価され続けるでしょう。作品全体を通して、彼の手腕を堪能できる一作として、多くの人に観られ続けることを願います。

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