高勢実乗

高勢 實乘について

高勢 實乘（たかせ みのる、または新字体表記の高勢 実乗）は、1897年12月13日に北海道函館市で生まれた、日本の喜劇俳優です。彼は昭和22年（1947年）11月19日に亡くなるまで、映画や舞台で多彩な役柄を演じ、特にコミックリリーフとしてその名を馳せました。愛称は「アーノネのおっさん」で、そのキャッチフレーズ「わしゃかなわんよ」は全国に広まり、彼のユニークなスタイルとして知られています。

幼少期と初期のキャリア

彼の芸歴は、1905年に上京し、舞台に立ち始めたことに端を発します。名古屋で「高勢 實」の名で一座の座長を務め、名優高田実の影響で「名古屋の高田実」と評されるほどでした。この頃、彼は真剣な芝居での存在感を磨いていきます。

1915年には、日活の前身となるM・カシー商会の映画『竜神の娘』に出演。同年には日活向島撮影所に入社しますが、すぐに退社し、国際活映に移籍します。ここで様々な作品に関わりますが、若干の成功を収めた後に、映画製作を試みるも短期間で終わってしまいます。

映画界での成功

1923年の関東大震災後、京都に移り、1925年には東亜キネマに入社します。ここでは仁科熊彦作品に出演し、また衣笠貞之助の映画に出演。1928年には日活太秦撮影所に入社し、主に悪役として名を馳せていきます。

1932年に監督の伊丹万作の『國士無双』での役が評価され、以降は喜劇俳優としてのキャリアを築くことになります。特に山中貞雄監督との仕事では、アメリカの喜劇コンビであるローレル・ハーディを模したコンビ作品がヒットし、「極楽コンビ」として親しまれました。

個性的なキャラクター

高勢は彼自身のキャラクターを活かし、特異な外見とメイキャップで強烈な印象を与える脇役として多くのファンを魅了しました。特にコメディアンとしての才能を発揮したトーキー時代以降は、その存在感が際立ちます。

彼が一世を風靡した後、戦時中には持ち味である突飛な演技が自粛され、「わしゃかなわんよ」のギャグが厳禁にされるなど、困難な時期も経験します。この時期、高勢は巡業で生活を支えることとなります。

最晩年

1945年の戦後、高勢は再び喜劇俳優として活動を開始しますが、1947年に死去。49歳の若さでの逝去に対して、多くの関係者が悲しみに暮れました。稲垣浩は「観客を楽しませた役者だっただけに、その最後の寂しさは悲しい」と語っています。

彼の遺作は斎藤寅次郎監督の『浮世も天国』で、映画界に残した功績は後世に語り継がれています。

人物とエピソード

高勢の人物像は、映画の枠を越えた個性を持ち合わせていました。彼は共演者に対してもユーモアを交えたやり取りを大切にし、特に高勢自身の独特の言い回しが印象的でした。また、彼のキャラクターは一部の役者にとっては強い影響を与え、その後の日本のコメディシーンにも影響を与えました。

エピソードで有名なのは、蛇を捕まえて食べた話や、演技においても一切手を抜かずに取り組む姿勢です。彼のこの熱意は、多くの仲間や先輩からの信頼を得る要素ともなりました。

結論

高勢實乘の人生とキャリアは、日本映画史における一つの重要な章です。独自のキャラクターやユーモア、情熱の火が、今でも多くのファンの心に生き続けています。

もう一度検索