國學院大學神殿
國學院大學神殿（こくがくいんだいがくしんでん）は、東京都渋谷区に位置する國學院大學のキャンパス内に鎮座する、大学独自の神殿です。この神殿は、日本の最高神である天照皇大御神をはじめ、すべての神々を意味する天神地祇八百万神を主祭神としてお祀りしています。
神殿は、國學院大學がそれまでの飯田町（現在の飯田橋）から渋谷の氷川裏御料地（現在の渋谷キャンパス所在地）へ移転した歴史的転換期に計画されました。大正時代末期、大学令による昇格に伴い、より広い敷地と施設拡充が求められたことが移転の契機となります。実業界で重きをなしていた和田豊治氏は、母体である皇典講究所・國學院大學には以前から神殿がなかったことを深く遺憾に思い、新たな校地に学問の神を鎮め祀る神殿の建立を強く願いました。その篤い志から、建立費用として当時としては多額の1万5千円が寄付されました。
しかし、渋谷への移転が実現した直後の1923年（大正12年）9月1日、関東大震災が発生します。この未曾有の災害により、大学の校舎は甚大な被害を受け、その復旧が最優先課題となりました。そのため、和田氏が待ち望んだ神殿の建設は大幅に遅れることとなり、残念ながら和田氏は神殿が完成し鎮座する姿を目にすることなく、1924年（大正13年）に逝去されました。
和田氏の遺志と寄付を基に、神殿は震災から時を経て、1929年（昭和4年）11月9日にようやく起工に至ります。翌1930年（昭和5年）1月29日には上棟祭が執り行われ、同年4月30日に無事竣工を迎え、神殿祭と鎮座祭が厳かに斎行されました。そして、翌日の5月1日には御鎮座奉祝祭が行われ、以来、この5月1日が神殿鎮座の日と定められ、今日まで毎年、盛大な記念祭として斎行され続けています。
神殿の建築設計は当初、内務省の技師であった角南隆氏が担当しましたが、計画の変更に伴い小林福太郎氏に引き継がれました。また、神殿を取り囲む緑地の植栽設計は田阪美徳氏が手掛け、工事は遠藤與之助氏が請負いました。
建立後も、神殿は時を経て様々な整備や改修が行われてきました。1978年（昭和53年）には、建立から40年以上が経過し傷みの見られた明神形鳥居が、寄贈された材木を用いて新築されました。1986年（昭和61年）には、屋根の葺き替え工事が行われ、本殿の銅板葺き替えを中心に、周辺の燈籠や装飾部分も修繕されています。さらに、1994年（平成6年）には、伊勢神宮の第61回式年遷宮に伴い下げ渡された旧殿舎の古材（豊受大神宮御正殿の一部）を拝受するという大変名誉な機会を得て、その材を用いて1995年（平成7年）に幣殿と拝殿が増築されました。
近年では、2009年（平成21年）に渋谷キャンパスの再開発事業の一環として、神殿の周辺環境が一新されました。神殿の左手にある井戸水を活用した前庭の「神奈備川（かんなびがわ）」や、周囲を囲む「神奈備の森（千年の森）」が新たに整備され、より趣深い神域が構築されています。
神殿の維持運営と祭儀の奉仕は、神職資格を持つ國學院大學の教職員の中から、理事長によって委嘱された神殿奉斎員と祭儀員が中心となって担っています。また、学内サークルである瑞玉會（みづたまかい）の学生たちも、神殿の清掃や祭儀の補助など、様々な形で奉仕に加わっています。
國學院大學神殿では、年間を通じて20回を超える様々な祭儀が厳修されています。主な祭典は以下のように分類されます。
大祭：神殿鎮座記念祭（5月1日）、創立記念祭（11月4日）
中祭：歳旦祭（1月1日）、建国記念祭（2月11日）、卒業奉告祭（3月）、入学奉告祭（4月）、天長祭（2月23日）
小祭：月次祭（毎月1日）
恒例式：大祓（6月、12月）
これら以外にも、若木祭における神輿渡御や観月祭、大学の新たな施設竣工に際して行われる祭儀など、多岐にわたる祭典が執り行われています。特に注目されるのは「成人加冠式」です。これは在学中の新成人を対象とした行事で、国内の大学で唯一、神道の形式で行われる成人式として公式に位置づけられています。新成人たちはこの式典において、「神殿奉告の儀」として神殿に参拝し、成人の節目を迎えたことを神々に奉告します。
神道系の大学としては、國學院大學の他に皇學館大学が存在しますが、皇學館大学には学内神社は設けられていません。この点からも、國學院大學神殿は国内の大学における独自の存在と言えます。また、伊勢神宮の古材拝受に見られるように、國學院大學神殿は伊勢神宮とも深いつながりを持ち続けています。
近年、國學院大學渋谷キャンパスの再開発が進められており、これに伴い神殿も新たな展開を迎えることになりました。2023年（令和5年）9月11日には、新たな神殿造営に向けた仮殿遷座祭が斎行されました。学校法人國學院大學の創立140周年記念事業の一環として、神域はさらに整備され、明治神宮から譲り受けた御仮殿の材木を用いて、新たな神殿が造営される計画です。現在鎮座している神殿は、その歴史的価値を鑑み、國學院大學たまプラーザキャンパスへ移築され、保存されることになっています。
このように、國學院大學神殿は単なる建物を超え、大学の創立以来の歴史、和田豊治氏の篤志、関東大震災からの復興、伊勢神宮との関係、そして教職員・学生の信仰の中心として、今日まで重要な役割を果たしてきました。そして、今後の新たな神殿の造営と現神殿の移築保存により、その歴史と意義は未来へと引き継がれていきます。
神殿は、國學院大學がそれまでの飯田町（現在の飯田橋）から渋谷の氷川裏御料地（現在の渋谷キャンパス所在地）へ移転した歴史的転換期に計画されました。大正時代末期、大学令による昇格に伴い、より広い敷地と施設拡充が求められたことが移転の契機となります。実業界で重きをなしていた和田豊治氏は、母体である皇典講究所・國學院大學には以前から神殿がなかったことを深く遺憾に思い、新たな校地に学問の神を鎮め祀る神殿の建立を強く願いました。その篤い志から、建立費用として当時としては多額の1万5千円が寄付されました。
しかし、渋谷への移転が実現した直後の1923年（大正12年）9月1日、関東大震災が発生します。この未曾有の災害により、大学の校舎は甚大な被害を受け、その復旧が最優先課題となりました。そのため、和田氏が待ち望んだ神殿の建設は大幅に遅れることとなり、残念ながら和田氏は神殿が完成し鎮座する姿を目にすることなく、1924年（大正13年）に逝去されました。
和田氏の遺志と寄付を基に、神殿は震災から時を経て、1929年（昭和4年）11月9日にようやく起工に至ります。翌1930年（昭和5年）1月29日には上棟祭が執り行われ、同年4月30日に無事竣工を迎え、神殿祭と鎮座祭が厳かに斎行されました。そして、翌日の5月1日には御鎮座奉祝祭が行われ、以来、この5月1日が神殿鎮座の日と定められ、今日まで毎年、盛大な記念祭として斎行され続けています。
神殿の建築設計は当初、内務省の技師であった角南隆氏が担当しましたが、計画の変更に伴い小林福太郎氏に引き継がれました。また、神殿を取り囲む緑地の植栽設計は田阪美徳氏が手掛け、工事は遠藤與之助氏が請負いました。
建立後も、神殿は時を経て様々な整備や改修が行われてきました。1978年（昭和53年）には、建立から40年以上が経過し傷みの見られた明神形鳥居が、寄贈された材木を用いて新築されました。1986年（昭和61年）には、屋根の葺き替え工事が行われ、本殿の銅板葺き替えを中心に、周辺の燈籠や装飾部分も修繕されています。さらに、1994年（平成6年）には、伊勢神宮の第61回式年遷宮に伴い下げ渡された旧殿舎の古材（豊受大神宮御正殿の一部）を拝受するという大変名誉な機会を得て、その材を用いて1995年（平成7年）に幣殿と拝殿が増築されました。
近年では、2009年（平成21年）に渋谷キャンパスの再開発事業の一環として、神殿の周辺環境が一新されました。神殿の左手にある井戸水を活用した前庭の「神奈備川（かんなびがわ）」や、周囲を囲む「神奈備の森（千年の森）」が新たに整備され、より趣深い神域が構築されています。
神殿の維持運営と祭儀の奉仕は、神職資格を持つ國學院大學の教職員の中から、理事長によって委嘱された神殿奉斎員と祭儀員が中心となって担っています。また、学内サークルである瑞玉會（みづたまかい）の学生たちも、神殿の清掃や祭儀の補助など、様々な形で奉仕に加わっています。
國學院大學神殿では、年間を通じて20回を超える様々な祭儀が厳修されています。主な祭典は以下のように分類されます。
大祭：神殿鎮座記念祭（5月1日）、創立記念祭（11月4日）
中祭：歳旦祭（1月1日）、建国記念祭（2月11日）、卒業奉告祭（3月）、入学奉告祭（4月）、天長祭（2月23日）
小祭：月次祭（毎月1日）
恒例式：大祓（6月、12月）
これら以外にも、若木祭における神輿渡御や観月祭、大学の新たな施設竣工に際して行われる祭儀など、多岐にわたる祭典が執り行われています。特に注目されるのは「成人加冠式」です。これは在学中の新成人を対象とした行事で、国内の大学で唯一、神道の形式で行われる成人式として公式に位置づけられています。新成人たちはこの式典において、「神殿奉告の儀」として神殿に参拝し、成人の節目を迎えたことを神々に奉告します。
神道系の大学としては、國學院大學の他に皇學館大学が存在しますが、皇學館大学には学内神社は設けられていません。この点からも、國學院大學神殿は国内の大学における独自の存在と言えます。また、伊勢神宮の古材拝受に見られるように、國學院大學神殿は伊勢神宮とも深いつながりを持ち続けています。
近年、國學院大學渋谷キャンパスの再開発が進められており、これに伴い神殿も新たな展開を迎えることになりました。2023年（令和5年）9月11日には、新たな神殿造営に向けた仮殿遷座祭が斎行されました。学校法人國學院大學の創立140周年記念事業の一環として、神域はさらに整備され、明治神宮から譲り受けた御仮殿の材木を用いて、新たな神殿が造営される計画です。現在鎮座している神殿は、その歴史的価値を鑑み、國學院大學たまプラーザキャンパスへ移築され、保存されることになっています。
このように、國學院大學神殿は単なる建物を超え、大学の創立以来の歴史、和田豊治氏の篤志、関東大震災からの復興、伊勢神宮との関係、そして教職員・学生の信仰の中心として、今日まで重要な役割を果たしてきました。そして、今後の新たな神殿の造営と現神殿の移築保存により、その歴史と意義は未来へと引き継がれていきます。
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