大学令

大学令：日本の高等教育を大きく変えた勅令

大正7年(1918年)12月6日、原内閣による高等教育拡張政策の一環として、大学令(勅令第388号)が公布されました。翌大正8年(1919年)4月1日に施行されたこの勅令は、それまで官立の帝国大学に限られていた大学の設置を、公立および私立にも認めた画期的なものでした。官公私立大学全てに適用される日本の高等教育制度における重要な転換点となりました。

大学令公布までの経緯：明治期の教育政策と高等教育

明治維新後の日本は、富国強兵・殖産興業政策を推進するため、国民的規模での教育水準向上を急務としていました。明治5年(1872年)に発布された学制は、フランスの学制を参考に、8大学区制を定め、大学設置を規定しました。しかし、この学制は地方の実情を無視した画一的なもので、明治12年(1879年)には教育令によって廃止されます。その後、アメリカの自由主義的制度を取り入れようとする試みもありましたが、地方の教育衰退が目立つなど、課題も多く残されました。

明治政府は、帝国大学を設置する一方、他の高等教育機関を段階的に官立化していきました。明治32年(1899年)の私立学校令、明治36年(1903年)の専門学校令によって高等教育機関の枠組みが法制化され、大学令公布の土台が築かれていきました。

大学令の内容：学部制、設置者、入学資格など

大学令は、大学における学部制を確立しました。それまでの帝国大学は分科大学制でしたが、大学令によって学部制に移行し、帝国大学もそれに倣うことになりました。学部は法学、医学、工学、文学、理学、農学、経済学、商学などが設置されました。また、研究科の設置を義務づけ、複数の学部を持つ大学では大学院の設置も認められました。

大学設置者は、帝国大学、官立大学、公立大学、私立大学と多様化されました。帝国大学は帝国大学令で組織が規定され、学生の修業年限や卒業については大学令に従うことになりました。公立大学は当初北海道と府県に限られていましたが、昭和3年(1928年)の改正で市による設置も認められました。私立大学は、大学を運営・維持できるだけの基本財産を持つ財団法人であることが条件とされました。公立大学と私立大学の設立・廃止の認可は文部大臣が行い、勅裁を受ける必要がありました。

大学令では、学部は3年以上、医学部は4年以上'>[予科]]の設置、[[修業年限]、入学資格なども規定されました。また、「大学」という名称の使用についても規制が設けられ、大学令に基づかない学校は「大学」と名乗ることが禁止されました。ただし、施行当時既に「大学」と名乗っていた学校は、例外的に名称を維持することが認められました。

大学令の廃止とその後：新制大学への移行

昭和22年(1947年)4月1日、学校[[教育法]]の施行により大学令は廃止されました。しかし、旧制大学は学校[[教育法]]施行時の規定により存続し、昭和24年(1949年)に旧制専門学校などを包括する新制大学が発足した後、段階的に廃止されていきました。また、医学専門学校を中心に、昭和25年(1950年)まで大学令に基づく大学の設置が行われました。

大学令は、日本の高等教育制度に大きな変革をもたらしました。帝国大学独占体制から脱却し、多様な大学が設立される道を拓いた大学令は、現代の日本の高等教育制度の基礎を築いた重要な法令と言えるでしょう。

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