豊受大神宮

豊受大神宮（外宮）：伊勢神宮の産業守護神を祀る聖地

三重県伊勢市豊川町に位置する豊受大神宮は、一般的に外宮と呼ばれ、伊勢神宮を構成する二つの正宮のうちのひとつです。内宮（皇大神宮）とともに伊勢神宮の重要な社殿であり、古くから人々の信仰を集めてきました。内宮を参拝する際には、外宮を先に訪れることが伝統的な作法とされています。

外宮の立地と境内環境

伊勢市街地、JR・近鉄伊勢市駅から徒歩圏内に鎮座する外宮は、アクセスの良さも魅力です。境内は、平清盛ゆかりの古木「清盛楠」や、初夏にはハナショウブが咲き誇る「勾玉池」など、自然豊かで静謐な空間が広がっています。一方で、外宮の周辺には伊勢市の中心業務地区（CBD）や、土産物店、旅館、銀行、企業支店などが混在する賑やかな町並みが広がり、現代社会と伝統が共存する独特の雰囲気を醸し出しています。

社殿は、皇大神宮と同様に板垣、外玉垣、内玉垣、瑞垣の四重垣に囲まれ、厳かな雰囲気を漂わせています。南北の門には宿衛屋が置かれ、神宮衛士による24時間体制の警備・管理体制が敷かれています。

祭神と歴史

主祭神は豊受大御神（とようけのおおみかみ）で、衣食住の恵みを与える産業守護神として信仰されています。御神体は『倭姫命世記』によると真経津鏡と伝えられています。相殿神として、天津彦彦火瓊瓊杵尊、天児屋根命、太玉命の三座が祀られているという説もあります。

外宮の創建に関する明確な記録は『古事記』や『日本書紀』には見当たりません。しかし、『止由気宮儀式帳』によると、雄略天皇の夢のお告げにより、丹波国の豊受大御神を伊勢に遷座したと記されています。具体的な年は不明ですが、『大神宮諸雑事記』には雄略天皇21年とする記述があります。延喜式神名帳には「度会宮 四座」として大社に列せられています。

中世には、度会氏が神職を務め、度会家行は伊勢[[神道]]（度会神道）を唱え、外宮を内宮よりも上位とする独自の思想を展開しました。

明治以降と戦災

明治時代には伊勢暴動が発生しましたが、外宮は被害を免れました。しかし、第二次世界大戦中の1945年には空襲を受け、爆弾が神域に落下する被害がありました。幸い、被害は軽微で、社殿の主要部分に大きな損傷はありませんでした。同年夏の宇治山田空襲でも、焼夷弾が降り注ぎましたが、御垣内は火災を免れました。

境内と摂末社

外宮の境内は、内宮と比べて規模は小さいものの、正宮（正殿、西宝殿、東宝殿）、御饌殿、外幣殿、多賀宮、風宮、土宮などの別宮、斎館、神楽殿、忌火屋殿、御酒殿など、多くの建物が配置されています。また、外宮の境界を守る四至神が祀られています。境内には、度会国御神社、大津神社などの摂末社も鎮座しています。

別宮は正宮に次ぐ高位の宮で、多賀宮、土宮、月夜見宮、風宮の四宮があります。摂社は『延喜式神名帳』に記載されている神社で、末社は『延暦儀式帳』に記載されている神社です。さらに、外宮所管社として、御酒殿神、四至神、上御井神社、下御井神社などがあります。

祭事

伊勢神宮の祭儀は通常「外宮先祭」で行われますが、式年遷宮だけは内宮が先に行われます。毎日行われる日別朝夕大御饌祭では、神職が調理した神饌を豊受大御神をはじめとする神々に奉献します。神饌の調達や調理には、神宮神田、神宮御園、土器調製所など、神宮独自のシステムが活用されています。

神馬

外宮では皇室から奉納された神馬が飼育されています。神馬は毎月1日、11日、21日に正宮を参拝する「神馬牽参」を行い、地元住民からは「お馬さま」と親しまれています。

現地情報と周辺

外宮へのアクセスは、JR・近鉄伊勢市駅、または宇治山田駅からバスや徒歩で可能です。また、伊勢自動車道伊勢西ICからも近く、無料駐車場も完備されています。外宮から内宮へは徒歩約50分ですが、バスも運行しています。

外宮境内には、式年遷宮に関する資料館である「せんぐう館」があります。2017年には台風被害を受けましたが、改修を経てリニューアルオープンしています。

外宮周辺には、高倉山など、歴史的にも重要な場所があります。

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