土井利益

土井利益(どい としえき)



土井利益は、江戸時代前期から中期にかけての譜代大名で、常陸国下妻藩主、下総国古河藩5代藩主、志摩国鳥羽藩主、肥前国唐津藩初代藩主を歴任しました。官位従四位下・周防守。土井家宗家5代当主です。

生涯



下妻藩主時代


古河藩2代藩主・土井利隆の次男として生まれた利益は、万治元年(1658年)に兄・利重から1万石を分与され、下妻藩主となりました。しかし、利重が後継ぎなく亡くなると、宗家の家督をめぐり、弟の利久とともに候補に挙がります。しかし、利益は素行不良を理由に家督を継ぐことができず、弟の利久が家督を相続しました。

利益は当時、江戸で派手な生活を送っており、「夜中歩行は犬か盗人か思ば本所の土井周防」と揶揄されるほどでした。

古河藩主へ


しかし、延宝3年(1675年)に利久が10歳で亡くなると、古河土井家は後継ぎがいなくなり断絶してしまいます。そこで、4代将軍徳川家綱は、土井家の功績を考慮し、特例として分家していた利益に宗家相続を命じました。こうして、利益は古河藩5代藩主となり、7万石を領有することになります。

藩主となった利益は、財政難のため家臣を解雇し、残った家臣の給与も削減しました。しかし、分家時代の家臣は特別待遇とするなど、家臣団の再編を行いました。これは、利益が宗家の重臣たちに不信感を抱いていたためと考えられています。利益は、自分こそが土井利勝の実孫であり、藩主になれたのは将軍家のおかげだと主張し、重臣たちに恩義はないと宣言しました。

鳥羽藩唐津藩


延宝9年(1681年)には志摩鳥羽藩へ、さらに元禄4年(1691年)には肥前唐津藩へと転封を命じられます。

鳥羽藩主時代に、近江国の学者・奥東江の学識に感銘を受けた利益は、彼を唐津藩に招き、藩政に参画させました。唐津藩は長崎見廻役の義務を負う重要な拠点であり、利益は東江の学問を藩政や教育に役立てようと考えました。

東江は、郡奉行や長崎勤番などを務め、その学識と識見によって藩政を支え、領民から尊敬を集めました。利益は東江を厚く信頼し、家老格に抜擢して、嫡男の養育も任せました。東江は後に病没しますが、その学問は唐津藩で「奥流の学」として受け継がれました。

正徳3年(1713年)に利益は死去し、享年64歳。跡を長男の利実が継ぎました。

人物



土井利益は、その波乱万丈な生涯から、毀誉褒貶が激しい人物として知られています。若い頃は素行不良で知られていましたが、藩主となってからは、学問を重視し、優秀な人材を登用するなど、藩政に力を尽くしました。特に、奥東江との出会いは、その後の藩政に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

系譜



父:土井利隆
母:側室(中川氏)
正室:太田資宗の娘
子女:
酒井忠囿正室
土井利実(長男)
土井利純
戸田氏長正室
稲葉正博
土井利清正室

参考文献



* 早川和見『古河藩現代書館〈シリーズ藩物語〉、2011年2月。

もう一度検索

【記事の利用について】

タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。

【リンクついて】

リンクフリーです。