土壁

土壁（つちかべ）

土壁は、土を主材料として作られる壁の総称であり、日本の伝統的な建築において重要な要素の一つです。左官職人の手によって丁寧に仕上げられる土壁は、その独特の風合いと機能性で、日本の住まいに温もりと安らぎを与えてきました。

構造

土壁の基本的な構造は、下地となる小舞（こまい）と呼ばれる木や竹を格子状に組んだものに、土を塗り重ねて作られます。その工程は、大きく分けて荒壁（あらかべ）、中塗り（なかぬり）、上塗り（うわぬり）の3段階に分けられます。

1. 荒壁：土に水と細かく切った藁（わら）である荒すさ（あらすさ）を混ぜたものを、小舞に塗りつけます。この際、壁の強度を高めるために、貫伏せ（ぬきぶせ）やちり回りなどの工程を丁寧に行うこともあります。
2. 中塗り：荒壁に使った土を水で薄めてふるいにかけ、川砂と苆すさ（すさを揉んだもの）を混ぜた土を、荒壁の上に塗り重ねます。中塗りは、壁の表面を滑らかにし、上塗りのための下地を整える役割を果たします。
3. 上塗り：白土、黒サビ土、浅黄土などの色土に、川砂とすさを混ぜて仕上げます。上塗りは、壁の最終的な表情を決定づける重要な工程であり、様々な色や質感の土を組み合わせることで、多様な表現を生み出すことができます。

工法

土壁の工法は、使用する材料や気候、地域によって様々な種類が存在します。建築材料の歴史の研究書によると、土壁の工法は大きく分けて以下の4種類に分類できます。

1. せき板や型枠を用いない方法：藁や草を混ぜた土を積み重ねていく工法です。
2. せき板や型枠を用いる方法：木の板や丸太などで空間を仕切り、その中に土を詰めて突き固める工法です。日本の版築（はんちく）やフランスのピセ（Pise de terre）などがこの方法にあたります。
3. 土（粘土）のブロックを積み上げる方法：粘土を成形して乾燥させたブロックを積み上げて壁を作る工法です。
4. 泥で煉瓦を作り予め乾燥させて用いる方法：泥でレンガを作り、それを積み上げて壁を作る工法です。

水合わせ

土に藁を混ぜてしばらく置くと、藁がバクテリアによって分解され、芯が残ります。この芯が壁の強度を高める役割を果たすというテクニックがあります。また、この方法を用いることで、土壁の乾燥時の収縮を抑え、ひび割れを均等に分散させる効果も期待できます。

土壁は、日本の気候風土に適した、環境に優しい建築材料です。その自然な風合いと調湿効果、断熱効果により、快適な居住空間を実現します。近年、その価値が見直され、現代建築にも積極的に取り入れられています。

関連項目

大壁
漆喰
真壁 (建築)
土塀
日本の文化
日本の住宅 - 日本の民家
日本壁
ぬりかべ
コブ (建築素材)
坪錐 - 忍者が土の壁に穴をあけるのに用いた道具。穴をあけて内部を確認したり、吹き矢を使うのに用いたとされる。
キンチャ - ラテンアメリカ先住民が使用していた葦の茎と土を混ぜる建築工法
泥れんが

もう一度検索