土川平兵衛

土川平兵衛は、享和元年（1801年）に近江国野洲郡三上村（現在の滋賀県野洲市）で生まれました。父は平兵衛、母はイシとされています。彼は地域の庄屋を務め、その責任感と正義感から、農民たちの窮状を見過ごすことができませんでした。

彼は、陽明学者の中江藤樹に私淑し、その教えに感銘を受けました。その中で、不公平な社会に対する強い義憤を抱くようになったと言われています。当時、農民たちは、守山駅の助郷の賦役に苦しめられていました。その負担は公平さを欠き、多くの農民が困窮していました。平兵衛は、文政11年（1828年）にこの問題を奉行所に訴え、その是正を求める活動を行いました。この訴えは実を結び、賦役の不公平は改善されました。しかし、その後の幕府の政策は、農民たちを再び苦しめることになります。

天保13年（1842年）、江戸幕府は近江国で検地を実施しました。しかし、そのやり方は極めて不当で、農民たちはさらに追い詰められていきました。平兵衛は、この不正な検地に立ち向かうため、黄瀬文吉、田島治兵衛らと協力し、3郡の庄屋たちを糾合して再検地を嘆願することを計画しました。その呼びかけに呼応した農民は4万人に達し、大規模な一揆へと発展しました。一揆勢は幕吏の旅舎を襲撃し、10万日の検地延期を約束する証文を獲得しました。しかし、幕府はこれを許さず、関与した農民たちを徹底的に弾圧しました。

数千人もの農民が捕らえられ、過酷な拷問を受ける中で40人以上が死亡しました。平兵衛を含む主要な11人は江戸へ送られ、そのうち3人は江戸に到着する前に亡くなりました。平兵衛は江戸に送られてから1ヶ月ほど後、裁きを待たずに獄死し、小塚原で梟首（さらし首）にされました。その後、千住回向院に改葬されています。

土川平兵衛の行動は、農民たちの苦境を救おうとした義挙として、後世に語り継がれています。彼の正義感と勇気は、現代においても多くの人々に感動を与えています。

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