土毛

土毛（どもう）

概要

土毛（どもう）とは、古代日本において特定の土地から産出される作物のことを指します。この言葉は「くにつもの」と読まれることもあり、その土地に自然に生える、まるで人間の毛髪のようなものを意味するとされています。土毛は、単なる作物としてだけでなく、その土地と支配者の関係性を象徴する重要な意味を持っていました。

支配者が土毛の献上を受けることは、その土地が支配者の支配下にあることを示すと考えられていました。そのため、律令制においても土毛の貢納は非常に重要視され、賦役令では、郡稲によって現地の土毛を時価で買い上げ、朝廷へと貢納することが義務付けられていました。これは、土地の産物を直接支配者に納めることで、その支配権を明確にする行為でした。

しかし、土毛として貢納されるものの中には、官物によって買い上げられ、朝集使によって貢納されるものもありました。これらは「諸国貢献物」と称され、土毛とは区別されていました。土毛が土地に自然に生えるものと解釈されていたのに対し、諸国貢献物は、官の管理下で買い上げられたものであるという違いがありました。

平安時代に入ると、土毛と諸国貢献物の区別は次第に曖昧となっていきました。社会の変化とともに、財政制度に組み込まれるようになり、交易雑物へと発展していきました。この変化は、単なる貢納物としての土毛の役割が薄れ、より経済的な価値を持つものへと変化していったことを示しています。

このように、土毛は古代日本の社会において、単なる産物としてだけでなく、支配関係や経済活動を示す上で重要な役割を果たしていました。

土毛に関する参考文献

宮原武夫「土毛」（『国史大辞典 10』、吉川弘文館、1989年）
俣野好治「土毛」（『日本歴史大事典 3』、小学館、2001年）
* 北村有貴江「土毛」（『日本古代史大辞典』、大和書房、2006年）

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